愛着スタイルの話には、よく出てくる図式があります。追う人(不安型)と逃げる人(回避型)は正反対で、だから惹かれ合う。磁石のプラスとマイナス、という説明です。
この図式は分かりやすく、実際に当てはまる場面もあります。ですが27,392件を測ってみると、前提の部分が崩れました。追う力と逃げる力は、正反対ではありません。同じ人の中で、同時に強くなります。

先に結論
- 見捨てられ不安と親密さ回避の相関は+0.604。プラス、つまり同じ方向に動く
- 正反対なら相関はマイナスになるはず。実測はその逆だった
- いちばん多いのは恐れ回避型で41.8%(両方が高い、または両方が低い側)
- 「追うだけの人」「逃げるだけの人」は合わせても29.2%しかいない
- つまり追いかけている人ほど、逃げたい気持ちも強く持っている
2つのスコアを散らして並べる
当サイトの診断では、愛着スタイルを4つのラベルで出す前に、2つの独立したスコアを計算しています。
見捨てられ不安は、相手が離れていくかもしれないという予感の強さです。返信が遅いとき、既読がつかないとき、そこに意味を探してしまう度合いと言い換えられます。
親密さ回避は、近づかれたときに引きたくなる強さです。距離を詰められると重い、予定を埋められると苦しい、心の内側を見せるのが怖い。この度合いです。
この2つを縦横に取ると、4つの区画ができます。人数の内訳はこうなりました。
| 区画 | 割合 | 不安 | 回避 | 人数 |
|---|---|---|---|---|
| 恐れ回避型 | 41.8% | 高い | 高い | 11,450件 |
| 安定型 | 29.0% | 低い | 低い | 7,948件 |
| 不安型 | 15.3% | 高い | 低い | 4,180件 |
| 回避型 | 13.9% | 低い | 高い | 3,814件 |
もし追う力と逃げる力が正反対なら、右上(両方が高い)はほとんど空になるはずです。実際には、そこがいちばん混んでいました。
相関+0.604が意味すること
2つのスコアの相関係数は+0.604でした。
相関係数は−1から+1の値を取ります。−1に近ければ完全な逆方向、0なら無関係、+1に近ければ完全な同方向です。人の心を扱う調査では、0.5を超えると「大きい」と表現されます。
| もし正反対なら | もし無関係なら | 実測 |
|---|---|---|
| −0.5 前後(強いマイナス) | 0.0 前後 | +0.604 |
実測は、予想の反対側に大きく振れました。不安が高い人ほど、回避も高いという関係です。
言い方を変えると、こうなります。いちばん強く追いかけている人は、いちばん強く逃げたがってもいる。矛盾しているように聞こえますが、実際に起きているのはこういうことです。

なぜ、同じ人の中で両方が強くなるのか
不安と回避は、逆の欲求ではありません。同じひとつの怖さに対する、2つの異なる対処法です。
元にあるのは「関係は壊れる」という予想
この予想を持っている人には、2つの選択肢があります。
ひとつは、壊れないように押さえること。連絡を増やし、機嫌を確認し、相手の予定を把握する。離れていく前に引き止める方向です。これが不安の側の動きです。
もうひとつは、壊れても平気なようにしておくこと。深く入らない、本音を渡さない、いつでも引ける位置に立つ。これが回避の側の動きです。
どちらも「壊れるのが怖い」から出ています。怖さが強い人は、両方の手を使います。だから2つのスコアが同時に上がる。相関がプラスになるのは、そういう理屈です。
実際の動き方は「交互」になる
両方が高い人は、2つを同時にはやりません。場面で切り替わります。
相手が遠いときは、不安の側が前に出ます。連絡が減った、態度が冷たい。ここで追いかけます。
相手が近づいてくると、回避の側が前に出ます。会う回数が増え、関係が固まりそうになる。ここで引きます。
外から見ると、気まぐれに見えます。本人にとっても一貫していないので、自分を責める材料になります。ですが構造としては単純で、距離が動くたびに、逆の手が出ているだけです。この揺れ方については急に冷たくなる人の心理と近づきたいのに怖いで詳しく扱っています。
「不安型と回避型は惹かれ合う」は間違いか
間違いではありません。ですが、言われているほど特別な現象ではない、というのが今回の見立てです。
まず、純粋な不安型と純粋な回避型は、合わせても29.2%しかいません。この組み合わせが成立する確率自体が低いということです。
では、なぜあの図式が実感に合うのか。理由は、両方高い人どうしでも同じ現象が起きるからです。
恐れ回避型の2人が付き合うと、片方が近づいたときにもう片方が引きます。引かれた側は不安が上がって追いかけます。追われた側は回避が上がって、さらに引く。役割が固定されていないだけで、追う/逃げるのやり取りは同じように発生します。
つまり実際に起きているのは「正反対の2人が引き合っている」ではなく、「同じ怖さを持つ2人が、交互に別の手を出している」状態です。相性の詳細は不安型と回避型の相性、繰り返しの止め方は同じパターンを繰り返す理由にまとめています。

自分がどちらで詰まっているかを、行動で見分ける
スコアを見なくても、2つは行動で切り分けられます。関係が揺れたときに、最初に出る手はどちらかです。
| 場面 | 不安が前に出ているとき | 回避が前に出ているとき |
|---|---|---|
| 返信が遅い | 意味を探す・追加で送る | こちらも返さなくなる |
| 相手が近づいてくる | 嬉しいがまだ足りない | 重い・予定を空けたくなる |
| けんかのあと | すぐ話したい | しばらく連絡を切りたい |
| 関係が固まりそう | 安心する | 逃げ道を確認したくなる |
| 相手が弱っている | 全部やってあげたい | 負担に感じる |
両方に心当たりがある場合、それが恐れ回避型です。どちらかを選ばなければいけない、ということはありません。大事なのは、いま前に出ているのがどちらかを、その場で言えるようになることです。
「今の私は追いかけたくなっている」「今は距離を取りたくなっている」。この一文が出るだけで、行動に移す前に一拍置けます。恐れ回避型の回復は、ここから始まります。詳しくは恐れ回避型の回復を読んでください。
自分の2つのスコアを数値で知りたい場合は、64タイプ診断で不安と回避が別々に出ます。4つのラベルではなく、2つの数字で見たほうが自分の状態は分かりやすいはずです。
両方が低い人(安定型)は、何が違うのか
ここまで両方が高い側の話をしてきました。逆側、つまりどちらも低い人が29.0%います。2番目に多い区画です。
この人たちは、追うことも逃げることもしないわけではありません。距離が動いても、意味を読み取らないのが違いです。
返信が半日遅れたとき、安定型は「忙しいのだろう」で止まります。関係の状態を疑う材料にしません。近づかれたときも同じで、相手が距離を詰めてきても、自分が飲み込まれるとは思いません。
つまり安定型が持っているのは、優しさでも余裕でもなく、「距離の変化は、関係の変化ではない」という前提です。この1つがあると、追う理由も逃げる理由も発生しません。
その前提は、あとから作れる
生まれつきそうだった人ばかりではありません。愛着スタイルは関係の中で更新されるもので、大人になってから安定側へ移る人は珍しくありません。
更新に必要なのは、距離が動いたのに関係が壊れなかった、という経験です。連絡が3日空いた、けんかをした、予定が流れた。それでも次に会えた。この積み重ねが前提を書き換えます。
逆に言うと、距離が動くたびに全力で介入していると、この経験が溜まりません。追いかけて引き止めれば「壊れなかった」ではなく「自分が壊れるのを防いだ」になり、前提は変わらないままです。何もしなくても壊れなかった、が要ります。
よくある質問
Q. 不安型と回避型は惹かれ合うというのは嘘ですか?
嘘ではありませんが、説明としては不正確です。純粋な不安型と純粋な回避型は合わせても全体の3割弱しかおらず、この組み合わせが成立する機会自体が多くありません。実際に多いのは、両方が高い人どうしが、場面ごとに追う側と逃げる側を交代しているケースです。役割が固定されていないだけで、やり取りの見た目は同じになります。
Q. 追いたい気持ちと逃げたい気持ちが同時にあるのは、おかしいですか?
おかしくありません。実測では、それがいちばん多い状態でした。2つは逆の欲求ではなく、「関係は壊れる」という同じ予想に対する2つの対処法です。壊れないように押さえるのが不安、壊れても平気にしておくのが回避。怖さが強い人ほど、両方の手を使います。矛盾ではなく、同じ根から出た2本の枝だと考えてください。
Q. 相関+0.604はどのくらい強いのですか?
人の心を扱う調査では、0.1で小さい、0.3で中程度、0.5で大きいという目安がよく使われます。今回の値はその「大きい」の水準です。ただし相関はあくまで一緒に動く度合いであり、どちらが原因かは示しません。また相関が高いことと、個人がそうであることは別です。片方だけが高い人も、全体の3割ほど実在します。
Q. 相手が「追う人」か「逃げる人」かを見分けるには?
1つの場面では判断できません。距離が動く場面を複数見てください。こちらが引いたときに追ってくるか、こちらが近づいたときに引くか。この2つを両方確認すると、片方だけの人か両方持っている人かが分かります。片方しか見ていない段階で相手をラベルで固定すると、次の場面で読み違えます。
Q. 両方高い場合、どちらから手をつければいいですか?
不安の側からです。回避は「近づくと危ない」という予想への反応なので、不安が高いままでは近づく練習が成立しません。具体的には、揺れている最中に判断しない、確認の回数をあらかじめ決めておく、返信が遅い理由を1つに決めない。この3つが先で、距離を縮める練習はそのあとです。
Q. このデータはどうやって集めたものですか?
当サイトの診断で見捨てられ不安と親密さ回避の両方のスコアが出ている27,392件を、個人が特定できない形で集計したものです。象限の区切りは各スコアの50を境にしています。学術調査ではなく、回答者の層にも偏りがあります。診断を受けにくる時点で自分の関係に引っかかりがある人が多いため、両方高い人の割合は一般人口より高く出ている可能性があります。
まとめ
- 見捨てられ不安と親密さ回避の相関は+0.604。正反対ではなく、同じ方向に動く
- いちばん多いのは恐れ回避型(41.8%)。片方だけ高い人は合わせて29.2%
- 2つは逆の欲求ではなく、同じ怖さへの2つの対処法。だから同時に強くなる
- 実際の動きは交互になる。相手が遠いと追い、近いと引く
- 次の一歩:不安と回避を別々に測る/近づきたいのに怖い/恐れ回避型の回復
※ 本記事の統計は当サイトの診断データ(27,392件)に基づく傾向であり、学術調査ではありません。相関は一緒に動く度合いを表すもので、原因の向きを示すものではありません。回答が増えるたびに自動で更新されます。