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診断と愛着を区別する

愛着障害と発達障害の違い — ADHD・ASDと似て見える理由、併発と誤診、大人の見分け方

── 子どもの診断名、大人の愛着スタイル、発達の特性。三つの層を分けると、絡まった話がほどけます

愛着障害と発達障害の違い|ADHD・ASDの見分け方と併発

「愛着障害と発達障害って、何が違うの?」「子どもがADHDと言われたけれど、本当は愛着の問題なのでは」「彼の冷たさは発達障害なのか、回避型なのか」。検索窓にこうした言葉を打ち込む人の多くは、目の前の誰か、あるいは自分自身の行動に、説明のつく名前を探しています。ネット上には「愛着障害は発達障害とそっくり」「ADHDと誤診される」といった記事があふれていて、読むほどに境目がわからなくなる、という声も少なくありません。

先に結論を書きます。愛着障害と発達障害は、同じ物差しの上で比べられるものではありません。絡まって見える理由の大半は、「愛着障害」という一つの言葉が、医学の診断名(子どもの反応性アタッチメント症など)と、大人の人間関係の傾向(愛着スタイル)という、まったく別の二つの意味で使われていることにあります。そこに、生まれつきの脳の発達の特性であるADHD・ASDが重なると、三つの層がひとかたまりに見えてしまうのです。

この記事では、この三つの層を一枚ずつはがしていきます。似て見える行動(人との距離、感情の起伏、衝動、こだわり)を並べて比べ、併発や誤診が語られる背景を研究の数字で確かめ、恋人・夫・子ども・自分について気になったときに何から整理すればいいかをまとめます。この記事で誰かを診断することはできません。そのかわり、専門家に相談するときに何を伝えればいいかが、読み終えるころにははっきりしているはずです。

この記事の位置づけ。「反応性アタッチメント症(反応性愛着障害)」「脱抑制型対人交流症」「ADHD(注意欠如多動症)」「ASD(自閉スペクトラム症)」は医学の診断名です。これに対して、安定型・不安型・回避型・恐れ回避型という四つの呼び名は、大人の恋愛や夫婦関係での近づき方の傾向を表す心理学の言葉で、病名ではありません。この記事では、医学の定説(公開されている診断体系の要約と研究の数字)、当サイトの整理(運営が愛着理論から考えた読み解きで、監修は臨床心理士)、未確定(研究者の間でも見解が分かれていること)を分けて書いています。診断基準の全文は載せていません。

この記事は、自分や家族、恋人を診断するためのものではありません。子どもへの虐待やネグレクトが心配なときは189(児童相談所虐待対応ダイヤル)へ。パートナーからの暴力、脅し、行動や金銭の監視・制限があるときは、相手の特性の理解より安全を優先し、#9110(警察相談専用電話)やDV相談ナビ(#8008)が使えます。不眠や食欲の低下、落ち込みが2週間を超えて続くなら、発達か愛着かを考えるより先に、医療機関か公的窓口で心身の状態を見てもらってください。

この記事でわかること

  • 「愛着障害」という言葉の二つの意味(子どもの診断名/大人の愛着スタイル)と、ADHD・ASDとの層の違い
  • 反応性アタッチメント症と脱抑制型対人交流症が、DSM-5・ICD-11でどこに置かれているか(公開された要約の範囲)
  • 人との距離・感情の起伏・衝動・こだわりの4つの行動が、なぜ似て見えるのか。比較表と見分けの手がかり
  • 併発はあるのか。ルーマニアの養子研究、自閉症と愛着のメタ分析、ADHDと愛着のレビューが示すこと
  • 「第四の発達障害」という議論と、誤診が語られる背景
  • 「発達障害の夫・彼氏」と「回避型」を混同しそうなときの考え方と、相談先の選び方

先に結論 — 三つの層を分けて考える

愛着障害と発達障害の違いを考えるとき、いちばん役に立つのは「どちらに当てはまるか」を当てることではなく、話がどの層で起きているかを分けることです。当サイトでは、次の三つの層に分けて整理しています(当サイトの整理)。

層代表的な言葉何を扱うか誰が判断するかおもな時期
① 子どもの診断名反応性アタッチメント症、脱抑制型対人交流症著しく不十分な養育のもとで、特定の大人に安心を求める行動が育たなかった状態児童精神科医など専門職が、養育歴と観察から評価乳幼児期(おおむね5歳まで)に始まる
② 大人の愛着スタイル安定型・不安型・回避型・恐れ回避型恋人や夫婦など親密な関係での、近づき方と離れ方の傾向診断ではない。研究では質問紙などで連続的に測る子ども時代に土台ができ、大人になっても変わりうる
③ 発達の特性ADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)など注意・衝動・社会的コミュニケーション・こだわりなど、脳の発達の特性医師が、幼いころからの発達歴と複数の場面での様子から評価幼少期から存在し、大人になって気づかれることも多い
① 子どもの診断名 反応性アタッチメント症など 医師が評価 ② 大人の愛着スタイル 安定・不安・回避・恐れ回避 診断名ではない ③ 発達の特性 ADHD・ASDなど 発達歴から評価 重なりうる
図1 三つの層。子どもの診断名・大人の愛着スタイル・発達の特性は別の物差しで、一人の中で重なることもある(当サイトの整理)。

「どちらか」ではなく「どの層で、どれが重なっているか」

この三つは、互いを打ち消し合う関係にありません。ADHDの特性を持ちながら、恋愛では不安型の傾向が強い人もいます。ASDの診断を受けていて、同時に安定型の愛着を持つ人もいます。逆に、発達の特性はとくにないけれど、回避型の傾向が強くて人との距離に悩む人もいます。「愛着か、発達か」という二択で考えると、たいてい答えを間違えます。

混乱の出どころは、言葉の使い方

ネットで「大人の愛着障害」と書かれているもののほとんどは、層①の診断名ではなく、層②の愛着スタイルの話です。ところが、同じ「障害」という語がついているせいで、層③の発達障害と同じ種類のものに見えてしまいます。まずはこの言葉のねじれをほどくところから始めます。基礎は愛着障害と成人の愛着スタイルは別ものでも詳しく扱っています。同じように言葉の層を分ける記事として、愛着スタイルとパーソナリティ障害の違いや回避性パーソナリティ障害と回避型愛着の違いもあります。

「愛着障害」という言葉は、二つの意味で使われている

日本語の「愛着障害」は、使う人によって指しているものが大きく違います。この違いを押さえないまま「愛着障害と発達障害の違い」を読むと、ある記事は子どもの診断名の話をし、別の記事は大人の恋愛の悩みの話をしていて、まったくかみ合いません。

狭い意味 — 医学の診断名としての愛着障害

医学の世界で「愛着障害」と言うとき、指しているのは主に反応性アタッチメント症(反応性愛着障害)と脱抑制型対人交流症という、子どもの診断名です。どちらも、施設での養育や深刻なネグレクトなど、特定の大人との安定した関係を持つ機会がきわめて限られた環境を前提にしています。「親が少し冷たかった」「厳しく育てられた」という程度で使われる言葉ではありません。

広い意味 — 大人の生きづらさを説明する言葉としての愛着障害

一方、一般向けの本やネット記事では、「愛着障害」がもっと広い意味で使われています。日本でこの広い使い方が知られるきっかけの一つになったのが、精神科医の岡田尊司さんの『愛着障害 — 子ども時代を引きずる人々』(光文社新書、2011年)です。この本では、親との安定した愛着を築けなかったことが、大人になってからの対人関係や生きづらさにどう残るかが、愛着スタイルの話と合わせて描かれています。この広い意味の「愛着障害」は、医学の診断名ではなく、層②の愛着スタイルの不安定さを指していると読むのが正確です。

この記事での言葉の使い分け

混乱を避けるため、この記事では、子どもの診断名を指すときは「反応性アタッチメント症」「脱抑制型対人交流症」と正式な名前で書き、大人の人間関係の傾向を指すときは「愛着スタイル」「回避型の傾向」などと書きます。単に「愛着障害」と書くときは、二つの意味が混ざって使われている一般の言い方を指しています。自分が気になっているのがどちらの意味なのか、読みながら意識してみてください。

子どもの愛着障害 — 反応性アタッチメント症と脱抑制型対人交流症

ここからは層①、医学の診断名としての愛着障害を、公開されている診断体系の要約の範囲で見ていきます(医学の定説)。

DSM-5で二つに分かれた

アメリカ精神医学会の診断マニュアルDSMでは、以前の版(DSM-IV)で「反応性愛着障害」は一つの診断名で、その中に「抑制型」と「脱抑制型」という二つの下位分類がありました。2013年のDSM-5で、この二つは別々の診断として独立しました。アメリカ精神医学会の公開資料は、どちらも社会的なネグレクトなど、幼い子どもが特定の相手に選択的な愛着を形づくる機会が限られた状況から生じるもので、原因の道筋は共通しながらも重要な点で違う、と説明しています。どちらも「心的外傷およびストレス因関連障害群」という章に置かれ、発達障害(神経発達症群)とは別の章です。

なお、2022年に改訂されたDSM-5-TRの日本語版では、名称がそれぞれ「反応性アタッチメント症」「脱抑制型対人交流症」になりました。古い資料では「反応性愛着障害」「脱抑制型対人交流障害」と書かれていますが、指しているものは同じです。

ICD-11でも「ストレスに関連する障害」に置かれている

世界保健機関(WHO)の国際疾病分類ICD-11(2022年発効)でも、反応性アタッチメント障害(6B44)と脱抑制型対人交流障害(6B45)は「ストレスに特異的に関連する障害」のグループに置かれています。ICD-11の要約では、どちらも著しく不十分な養育(深刻なネグレクト、虐待、施設での剥奪など)という背景があることが前提で、1歳未満(発達年齢で9か月未満)では診断しない、症状は生後5年以内にあらわれる、といった枠が示されています。

見る点反応性アタッチメント症脱抑制型対人交流症
子どもの様子(要約)つらいときにも養育者に安心や慰めを求めることがほとんどない。うれしそうな表情が乏しいよく知らない大人にもためらいなく近づき、なれなれしくふるまう。知らない人について行こうとする
似ていると言われやすいものASD、うつや不安などの内側に向かう症状ADHDの衝動性・多動
前提になる背景著しく不十分な養育(深刻なネグレクト、頻繁な養育者の交代、施設での剥奪など)同左
時期の枠発達年齢9か月以上、5歳までにあらわれる(DSM-5)発達年齢9か月以上(DSM-5)。ICD-11では生後5年以内にあらわれる
ASDとの関係DSM-5では、ASDの基準を満たす場合は診断しない。ICD-11の要約も同様ICD-11の要約では、ASDの文脈では診断しない
大人の診断大人に新しくつける診断名としては想定されていない同左(研究では若い成人まで追跡されている)

「ASDなら反応性アタッチメント症とは診断しない」の意味

表の中でとくに大事なのが、DSM-5の反応性アタッチメント症に「ASDの基準を満たさないこと」という条件がついている点です。これは、幼い子どもでは、ASDでも反応性アタッチメント症でも、うれしい表情が乏しい、ことばや認知の遅れがある、やりとりが一方通行に見える、といった共通の姿があらわれうるためです。診断の現場では、ネグレクトの養育歴があるかどうか、限られた興味や儀式的なこだわりがあるかどうか、特定の相手を選んで甘える行動があるかどうか、といった点から両者を区別するとされています。

どのくらいの子どもに見られるのか

反応性アタッチメント症は、めったにない診断だと考えられてきました。けれど、イギリス・グラスゴーの研究チーム(Minnis ほか, 2013)が、経済的に厳しい地域に住む6〜8歳の子ども1,646人をすべて調べたところ、推定の有病率は1.40%(95%信頼区間 0.94〜2.10%)でした。論文は「この地域の一般の子どもの中では、まれではなかった」と結論づけています。ただし、これは厳しい環境に置かれた地域での数字で、日本全体の子どもに当てはまる値ではありません。

大人の「愛着スタイル」は診断名ではない

次に層②、大人の愛着スタイルです。こちらは医学の診断ではなく、心理学の研究の枠組みです。

4つの愛着スタイルのおさらい

成人の愛着研究では、親密な関係での「見捨てられる不安」と「近づくことへの回避」という二つの軸で、人の傾向をとらえます。二つの軸の高さの組み合わせから、安定型(不安も回避も低い)、不安型(不安が高い)、回避型(回避が高い)、恐れ回避型(どちらも高い)の四つの呼び名が使われます。これらは「病気」ではなく、誰もがどこかに位置する連続した傾向です。

「不安定型の愛着」と「愛着障害」は同じではない

不安型や回避型の傾向が強いことは、それだけで何かの障害を意味するわけではありません。研究で使われる尺度には診断の線引き(ここから上が病気、という境目)がありませんし、ネットのチェックで「回避型」と出ても、それは医療の対象になる状態を示すものではありません。生活に大きな支障が出ているときに相談の対象になるのは、愛着スタイルそのものではなく、眠れない、仕事が続かない、関係の中で強い苦痛がある、といった具体的な困りごとです。相談の目安は「愛着障害かも」と感じたときの振り返りで、点数を使わない形でまとめています。

発達障害(ADHD・ASD)の位置づけ

層③の発達障害は、DSM-5では「神経発達症群」という章にまとめられています。ここでも、公開されている要約の範囲で押さえます(医学の定説)。

ADHD — 注意・衝動・多動の特性

ADHD(注意欠如多動症)は、不注意と、多動性・衝動性の特性が、複数の場面で続き、生活に支障をきたしている状態を指します。DSM-5では、症状があらわれ始める時期の条件が、以前の「7歳より前」から「12歳より前にいくつかの症状があった」に改められました。また、17歳以上では必要な症状の数が6つから5つに下げられ、大人のADHDが評価しやすくなっています。

ASD — 社会的コミュニケーションとこだわりの特性

ASD(自閉スペクトラム症)は、社会的なコミュニケーションや対人的なやりとりの持続的な特徴と、限られた興味や反復的な行動、感覚の過敏さや鈍さなどの特徴を、幼いころからの発達歴を含めて評価するものです。DSM-5で、以前の自閉性障害、アスペルガー障害などが一つの「スペクトラム(連続体)」にまとめられました。

ADHDとASDは同時に診断できるようになった

DSM-IVでは、ASDがあるとADHDは診断しない決まりでした。DSM-5ではこの決まりがなくなり、両方の基準を満たせば両方を診断できるようになっています。発達の特性どうしが重なりうることは、いまでは前提になっているのです。HSPも含めた三つの違いはHSP・ASD・ADHDの違いで、感覚過敏や過集中の場面ごとに整理しています。

なぜ混同されるのか — 似て見える4つの行動

層がまったく違うのに、なぜ愛着障害と発達障害はこれほど混同されるのでしょうか。いちばん大きな理由は、外から見える行動が似ていることです。人と距離を取る、感情が急に高ぶる、思いつきで動く、決まったやり方にこだわる。この四つは、発達の特性からも、愛着の傷つきからも、あるいは不安やトラウマ、睡眠不足からも生まれます。

同じ行動、違うエンジン

当サイトでは、この状況を「同じ行動、違うエンジン」と呼んでいます(当サイトの整理)。車が急に止まったとき、原因がガス欠なのか、ブレーキなのか、道がふさがっているのかは、止まったという事実だけではわかりません。行動も同じで、何がその行動を動かしているのかを見ないかぎり、名前はつけられません。次の表は、4つの行動それぞれについて、ADHD・ASD・愛着の不安定さのどれから生まれやすいかを並べたものです。

比較表 — 似て見える行動の「エンジン」の違い

この表は、見分けのための診断表ではありません。一人の中で複数のエンジンが同時に動いていることもよくあります。あくまで「こういう違いがありうる」という手がかりとして読んでください(当サイトの整理)。

似て見える行動ADHDの特性から起きるときASDの特性から起きるとき愛着の不安定さから起きるとき
人との距離が遠い・近すぎる話の途中で注意がそれる、約束を忘れる結果として距離ができる。逆に思いつきで急に距離を詰める相手の気持ちの読み取りや暗黙のルールの理解に負荷がかかり、疲れて距離を取る。距離感の目安がつかみにくい近づくと傷つくという予測から距離を取る(回避)、見捨てられる不安から近づきすぎる(不安)
感情の起伏が激しい感情のブレーキがききにくく、瞬間的に怒りや落ち込みが出て、すぐ収まることも多い予定の変更や感覚の刺激で限界を超え、パニックやシャットダウンが起きる関係の揺れ(連絡が来ない、冷たくされた)をきっかけに、不安や怒りが長く続く
衝動的に動く考える前に口や体が動く。場面を問わず、幼いころから続いている衝動というより、決めたルールや関心に沿って一直線に動いて見える見捨てられそうな場面で、連絡を連投する、別れを切り出すなど、関係に向けた行動が急に出る
こだわりが強い興味のあることに没頭して切り替えられない(過集中)決まった手順や順番、特定の興味が安心の源になっている。変更で強い苦痛が出る相手の行動を確認し続ける、関係のルールを細かく決める、など不安を抑えるための手順として出る

見るべきは「どの相手の前で起きるか」

表を横に読むと、一つのパターンが見えてきます。ADHDやASDの特性から来る行動は、相手が誰であっても、場面が変わっても比較的一貫してあらわれやすいのに対し、愛着の不安定さから来る行動は、恋人や家族など親密な相手の前で強まり、関係の揺れに反応して出たり引っ込んだりしやすい、ということです。もちろん例外はありますが、この「相手と場面の広さ」は、相談のときにも役立つ観点です(当サイトの整理)。

行動① 対人の距離 — 「人づきあいが苦手」の中身

「人と距離を取る」「親しくなると離れていく」は、回避型の愛着の説明でも、ASDの説明でも、よく登場する行動です。

回避型の距離 — 近さそのものが居心地悪い

回避型の傾向が強い人は、人づきあい全般が苦手とは限りません。職場の雑談や友人との遊びは問題なくこなせるのに、相手が恋人になったとたん、近さが重く感じられるという形が典型です。頼られる、甘えられる、将来の話をされる、といった場面で心のシャッターが下ります。背景には、弱さを見せても受け止めてもらえなかった経験から身につけた「自分でなんとかするほうが安全」という予測があります。詳しくは回避型の親密さへの恐怖へ。

ASDの距離 — 読み取りの負荷と疲れ

ASDの特性がある人の距離は、「近さが怖い」というより、人とのやりとりに多くのエネルギーを使うことから生まれやすいと言われます。表情や声の調子から気持ちを読む、言葉にされない期待を察する、会話の順番を合わせる。こうした作業を意識的に行っているため、相手が恋人でも同僚でも、長く一緒にいると消耗します。距離を取るのは、相手を拒んでいるからではなく、充電のためであることも多いのです。この違いはASDと回避型愛着の違いでも、自己判断をしないための観点としてまとめています。

行動② 感情の起伏 — 爆発のきっかけを見る

急に怒る、急に泣く、気分の上下が激しい。この行動も、ADHD、ASD、愛着の不安定さのどれからも起こりえます。

きっかけが「関係」か「刺激や予定」か

見分けの手がかりになるのは、感情が爆発したきっかけです。愛着の不安定さから来る感情の揺れは、LINEの返信が遅い、約束をドタキャンされた、冷たい言い方をされたなど、関係の揺れがきっかけになりやすいのが特徴です。一方、ASDの特性から来るパニックは、予定の急な変更、大きな音、人の多さなど、刺激や見通しの崩れがきっかけになることが多く、ADHDの特性から来る感情の爆発は、きっかけが小さくても瞬間的に出て、すぐ収まることが多いと言われます。

感情の調整は、どの層にも共通する課題

ただし、感情の調整の難しさは、特定の層だけのものではありません。発達の特性がある人が、否定され続けた経験から愛着の不安も抱えることは珍しくなく、その場合は両方のきっかけで感情が揺れます。自分の感情の波の扱い方は不安型の感情のコントロールや恐れ回避型の感情調整で、きっかけ別に書いています。

行動③ 衝動 — 「思いつきで動く」の違い

衝動的な行動は、ADHDの中心的な特性の一つです。けれど、愛着の文脈でも、衝動的に見える行動はよく起きます。

ADHDの衝動は「場面を選ばない」

ADHDの衝動性は、恋愛に限らず、買い物、仕事、会話、運転など、生活のあちこちであらわれやすいのが特徴です。そして多くの場合、子どものころから「落ち着きがない」「順番を待てない」「思ったことをすぐ口にする」と言われてきた経歴があります。DSM-5で「12歳より前にいくつかの症状があった」ことが条件になっているのは、この幼いころからの連続性を確かめるためです。

愛着の衝動は「見捨てられそうな場面」に集まる

不安型や恐れ回避型の傾向が強い人の衝動的な行動は、関係が揺らいだ場面に集中しやすい傾向があります。返信が来ないと何十通もメッセージを送る、けんかの勢いで別れを切り出してすぐ後悔する、相手を試すような行動を取る。普段は落ち着いているのに、恋人との関係になると別人のようになる、という形です。こうした行動は試し行動の記事で、止め方と合わせて扱っています。脱抑制型対人交流症の「知らない大人にためらいなく近づく」行動がADHDの衝動性と似て見えることも、混同の理由の一つとして知られています。

行動④ こだわり — 安心の源か、不安の抑え込みか

決まった手順を崩されると強く動揺する。相手の行動を細かく確認しないと落ち着かない。どちらも「こだわりが強い」と表現されますが、中身はかなり違います。

ASDのこだわりは「世界を予測可能にする」

ASDの特性として語られるこだわりは、決まった順番、同じ道順、特定のテーマへの深い関心など、それ自体が安心や喜びの源になっていることが多いものです。恋人がいてもいなくても、幼いころから続いています。予定の変更がつらいのは、頭の中で組み立てた見通しを作り直す負荷が大きいためと説明されます。

愛着のこだわりは「関係の不安を抑える手順」

一方、愛着の不安から来るこだわりは、関係の不安を鎮めるための手順として生まれます。毎晩決まった時間に連絡してほしい、既読がついたらすぐ返してほしい、相手の予定を全部知っておきたい。こうした決まりごとは、相手との関係が安定していると感じられる時期には自然とゆるみ、不安が強まると増えるのが特徴です。関係の外、たとえば趣味や仕事の手順には、同じ強さのこだわりが見られないことも多いでしょう。

見分けの手がかり — 専門家が確かめる5つの問い

ここまで見てきたように、一つの行動だけで層を決めることはできません。専門家が評価のときに確かめるのは、行動そのものより、その時間の流れと広がりです。相談の前に自分で整理しておくと役立つ問いを、五つにまとめました(当サイトの整理。診断の手順そのものではありません)。

問い発達の特性を示唆しやすい答え愛着の不安定さを示唆しやすい答えメモの例
1. いつからあるか幼稚園・小学校のころから、形を変えて続いている特定の関係や出来事のあとから目立つようになった通知表のコメント、家族から聞いた幼いころの様子
2. どの相手の前で起きるか家族、友人、職場、恋人のどこでも似た形で出る恋人や家族など、親密な相手の前で強くなる場面ごとに「出る・出ない」を書き出す
3. 何がきっかけか音や人の多さ、予定の変更、退屈、課題の量返信の遅れ、冷たい態度、別れの気配直前に何があったかを1行で
4. 安心できる相手がいると変わるか相手が安心できる人でも、特性による困りごとは残る安定した関係が続くと、行動がゆるむことが多い関係が落ち着いていた時期と比べる
5. 環境の工夫で変わるか静かな場所、手順の見える化、リマインダーで楽になる環境を整えても、関係の不安が続く試した工夫と効き目

発達歴は「いま」ではなく「子どものころ」を見る

とくに大事なのが問い1です。ADHDもASDも、幼いころからの発達の経過を確かめることが評価の中心になります。大人になってから初めて気づかれる場合でも、振り返ると子どものころから形を変えて存在していた、という連続性が見られるのが一般的です。逆に、ある時期までまったく問題がなかったのに、特定の出来事をきっかけに急に行動が変わった場合は、発達の特性以外の原因(ストレス、うつ、不安、トラウマ、身体の病気など)を先に考える必要があります。

「うまく隠してきた」可能性もある

ただし、子どものころに目立たなかったからといって、発達の特性がないとは言い切れません。とくに女性や知的な遅れのない人では、周りをまねる、過剰に準備する、家族が陰で補う、といった形で特性が表に出にくかったケースがあると指摘されています。「子どものころは問題なかった」も「子どものころからあった」も、自己判断で結論を出さず、材料として専門家に伝えるのが安全です。

問い4が、愛着の層を見るいちばんの窓

問い4の「安心できる相手がいると変わるか」は、愛着の層を見るうえでとくに役に立ちます。愛着スタイルは、安定したパートナーとの関係の中で少しずつ変わりうることが、研究でも示されています。安心できる相手との関係が長く続いたときに行動がゆるむなら、少なくともその行動の一部には、関係への不安が関わっていると考えられます。愛着スタイルの変化については愛着スタイルの変え方と成人の愛着傾向は変わらない?で詳しく扱っています。

併発はありうる — 研究でわかっていること

「愛着障害と発達障害は併発するのか」という問いには、層を分けて答える必要があります。層①の子どもの診断名と層③の発達障害、層②の大人の愛着スタイルと層③の発達の特性では、わかっていることが違うからです。代表的な研究を、確認できた数字とともに並べます(医学・心理学の研究。数字は各論文の要旨で確認)。

研究対象わかったこと読み取れること
Rutter ほか(1999)ルーマニアの施設から英国の家庭へ養子に来た子ども111人と、国内養子52人ルーマニアから来た子どもの6%に自閉症に似た行動のパターン、さらに6%に軽い特徴。国内養子には見られなかった深刻な剥奪が「自閉症によく似た姿」を生みうる。ただし6歳までの改善など、典型的な自閉症と違う点もあった
Sonuga-Barke ほか(2017)同じ養子研究の追跡。6か月以上施設にいた群(6歳時98人、成人期72人)など6か月以上施設にいた群では、ASDの症状、脱抑制型の対人交流、不注意・多動の症状が、22〜25歳まで英国の対照群より高いまま続いた早期の剥奪は、発達障害に似た症状を大人まで残しうる。一方で5人に1人(15人)はどの時点でも問題が見られなかった
Rutgers ほか(2004)自閉症の子どもの愛着を調べた16研究のメタ分析(10研究・287人を統合)自閉症の子どもは比較群より安定した愛着が少なかった(効果量 r = .24)。ただしストレンジ・シチュエーション法を使った4サンプルでは平均53%が安定型。発達の水準が高い群では差が消えたASDがあっても、半数ほどの子どもは親と安定した愛着を築いている
Storebø ほか(2016)ADHDと愛着に関する29研究のレビュー親との愛着の問題や環境の要因が、子どものADHDと関連していた。大人のADHDでは、不安定な愛着スタイルの割合が一般より高かったADHDと不安定な愛着は結びつきやすいが、どちらが原因かはこのレビューだけでは決められない

「剥奪で発達障害に似た姿が生まれる」ことはわかっている

イギリスとルーマニアの養子研究(English and Romanian Adoptees study)は、この分野でもっともよく引用される研究の一つです。1989年の政権崩壊後、劣悪な施設から英国の家庭に迎えられた子どもたちを追いかけたこの研究は、生後早期の深刻な剥奪が、自閉症によく似た行動、脱抑制型の対人交流、不注意・多動の症状を生み、それが若い成人期まで続きうることを示しました。ここで大事なのは、これがごく深刻な剥奪の研究であり、一般の家庭の「少し冷たい親」「忙しい親」とは比べられない環境だという点です。

「ASDだから愛着が築けない」わけではない

逆向きの思い込みもあります。「ASDの子は親に愛着を持たない」というものです。Rutgers らのメタ分析は、自閉症の子どもにも愛着行動がはっきり見られ、半数ほどが安定した愛着を示していたことを報告しています。比較群との差も、発達の水準が高い子どもの群では見られなくなっていました。ASDであることと、親との愛着が安定していることは両立します。

ADHDと不安定な愛着は、ニワトリと卵

ADHDと不安定な愛着が結びつきやすいことは、複数の研究で報告されています。ただ、その理由については一つに決まっていません。子どもの特性ゆえに育児が難しくなり、親子の関係が不安定になる道筋。親自身もADHDの特性を持っていて、家庭が予測しにくくなる道筋。不安定な環境が子どもの注意や感情の調整に影響する道筋。こうした複数の道筋が、同時に働いていると考えられています(未確定)。

大人の愛着スタイルとADHD・ASDの重なり

大人のADHDの人に不安定な愛着スタイルが多いという報告は、当サイトの読み解きとも矛盾しません。忘れ物や遅刻、衝動的な発言で叱られ続けた経験は、「自分は受け入れてもらえない」という感覚を育てやすいからです(考察)。一方、大人のASDと愛着スタイルの関係は研究がまだ少なく、はっきりした結論は出ていません(未確定)。どちらにしても、発達の特性がある人が、同時に愛着の不安や回避を抱えることは珍しくないと考えておくのが現実的です。

「第四の発達障害」という議論

「愛着障害 発達障害」で調べると、「第四の発達障害」という言葉に出会うことがあります。この言葉の出どころと、どう読めばいいかを整理します。

杉山登志郎さんの問題提起

この言葉を広めたのは、児童精神科医の杉山登志郎さんの著書『子ども虐待という第四の発達障害』(学研、2007年)です。杉山さんは、知的障害や肢体不自由などの古典的な発達障害を第一、自閉症を第二、学習障害やADHDを第三とし、子ども虐待を第四の発達障害と位置づけました。虐待を受けた子どもが、ADHDによく似た多動や不注意、感情の激しい揺れなどを示し、発達の道筋そのものが大きく影響を受けることを、臨床の立場から強く訴えたものです。

診断名ではなく、臨床からの問題提起として読む

「第四の発達障害」は、DSMやICDに載っている診断名ではありません。虐待を受けた子どもの姿が発達障害とよく似ていること、そして両方を見なければ支援を誤りうることを伝えるための、臨床家による問題提起の言葉です。この本の主張をもとに「落ち着きのない子は虐待を受けている」「ADHDはすべて育て方のせい」と読みかえるのは、明らかな誤読です。ADHDやASDには強い遺伝的な要因があることもよく知られています。

この議論から受け取れること

当サイトがこの議論から受け取っているのは、次の二点です(考察)。一つは、行動だけを見て「発達障害」と決めると、背景にある養育環境の問題を見落としうること。もう一つは、逆に「愛着の問題」と決めると、発達の特性への支援を見落としうること。どちらの見落としも、子どもにとっては必要な支援が届かないことを意味します。だからこそ、専門家は養育歴と発達歴の両方を確かめます。

誤診が語られる背景 — 「本当は愛着障害だった」は本当か

「ADHDと診断されたけれど、本当は愛着障害だった」「愛着障害だと思っていたら発達障害だった」。こうした体験談は、ネットでも本でもよく見かけます。誤診の話がなぜこれほど語られるのか、背景を整理します。

子どもの評価は、とくに難しい

幼い子どもは、自分の内側で何が起きているかを言葉で説明できません。評価は、行動の観察と、養育者からの聞き取りが中心になります。ところが、養育環境に問題がある家庭では、養育歴そのものが正確に伝わらないことがあります。逆に、発達の特性のある子を育てる親が、周りから「育て方が悪い」と責められ、自分でもそう思い込んでいることもあります。情報の入り口がゆがみやすいことが、評価を難しくしています。

「診断が変わる」ことは、必ずしも誤りではない

子どもの発達は変化します。4歳のときに自閉症に似た姿を見せていた子どもが、安定した環境で過ごすうちに大きく変わることは、先ほどのルーマニアの養子研究でも示されていました。成長とともに見立てが更新されることは、「最初の診断が間違いだった」というより、評価が時間をかけて精度を上げていく過程として理解したほうが正確な場合があります。

「誤診」という言葉が生む二つの危うさ

一方で、「本当は愛着障害」という言葉には危うさもあります。一つは、発達の特性への支援や治療を「誤診だから」と自己判断でやめてしまうこと。もう一つは、養育者、とくに母親が「自分の愛情不足で発達障害のような状態にさせた」と自分を責め続けることです。どちらも、本人や家族を追い詰めます。気になるときは、主治医に「愛着の面も含めて見てほしい」と率直に伝えるのが、いちばん安全な道です。

大人の場合 — 「大人の愛着障害」と「大人の発達障害」

「愛着障害 発達障害 大人」で調べる人の多くは、自分自身の生きづらさの理由を探しています。大人の場合、層の整理はさらに大事になります。

大人に新しくつく「愛着障害」の診断は、基本的にない

反応性アタッチメント症や脱抑制型対人交流症は、子どもの時期に始まる状態として定義されています。大人になってから病院で新たに「愛着障害」と診断されることは、基本的に想定されていません。ネットで言う「大人の愛着障害」は、ほぼすべてが層②の愛着スタイルの不安定さ、あるいは子ども時代のつらい経験の影響を広く指した言葉です。愛着とトラウマの違いやアダルトチルドレンと愛着も、同じように言葉の層を分ける記事です。

大人の発達障害は、医療で評価できる

一方、ADHDやASDは、大人になってからでも医療機関で評価を受けることができます。仕事でミスが続く、段取りが組めない、人間関係でいつも同じつまずきをする、といった困りごとから受診し、初めて特性がわかる人も少なくありません。職場の人間関係のつまずきを愛着の面から見る視点は愛着スタイル別・職場の人間関係にまとめています。大人の評価でも、子どものころの様子が確かめられるため、通知表や母子手帳、家族の話などが手がかりになります。

「両方あるかもしれない」という見方

大人の生きづらさは、多くの場合、一つの原因では説明できません。発達の特性があって、そのために叱られ続け、自己評価が下がり、人間関係で不安や回避を強めてきた。そんな層の重なりこそが、大人の悩みの実像に近いと当サイトは考えています(考察)。発達の特性がある場合は特性への工夫を、愛着の不安や回避がある場合は関係の中での安心の積み重ねを、というように、層ごとに手当ての方法は違います。

4つの愛着スタイル × ADHD・ASDの特性で起きやすいこと

発達の特性と愛着スタイルが重なると、どんなことが起きやすいのでしょうか。これは研究で確かめられた類型ではなく、愛着理論と発達の特性の一般的な説明を組み合わせた当サイトの整理です。自分や身近な人に当てはめて「診断」するためのものではありません。

愛着スタイルADHDの特性と重なるとASDの特性と重なると助けになりやすいこと
安定型忘れ物やミスはあっても、相手に助けを求められる。関係の揺れは小さいやりとりに疲れても、「疲れたから休むね」と言葉にできる特性への工夫(リマインダー、手順の見える化)に集中できる
不安型衝動的な連絡や確認が、見捨てられ不安で増幅しやすい相手の気持ちが読み取れない不安が、見捨てられ不安と重なる「確認したい気持ち」と「特性による行動」を分けて相手に伝える
回避型約束を忘れた罪悪感から、さらに距離を取る悪循環が起きやすい充電のための距離と、近さを避ける距離が区別しにくくなる距離を取るときに「いつ戻るか」を一言添える
恐れ回避型衝動的に近づき、衝動的に離れる振り子が大きくなりやすい近づきたい気持ちと、疲れと、怖さが同時に来て混乱しやすい一人で整理せず、安全な第三者(相談先)を持つ

安定型 × 特性 — 特性があっても関係は安定しうる

発達の特性があることと、愛着が不安定であることは別の話です。特性による困りごとがあっても、困ったときに人に頼れる、失敗しても関係が壊れないと信じられる人は、安定型の土台を持っています。こうした人にとって必要なのは、関係の修復ではなく、特性に合わせた生活の工夫です。安定型の特徴は安定型とはでまとめています。

不安型 × 特性 — 「確認したい」が二重になる

相手の表情や言葉の裏が読み取りにくいという特性があると、「怒っているのかな」「嫌われたのかな」という不安が生まれやすくなります。そこに見捨てられ不安が重なると、確認の連絡が止まらなくなることがあります。不安の出どころが二つあると知るだけで、自分を責める気持ちは少し軽くなります。不安型の恋愛の型は不安型の恋愛で詳しく書いています。

回避型 × 特性 — 「疲れ」と「怖さ」が区別できなくなる

人とのやりとりで消耗しやすい特性があると、距離を取ることが生活の必需品になります。同時に回避型の傾向があると、その距離が、相手にとっては「拒絶」に見えてしまいます。本人にも、自分がいま疲れているから離れたいのか、近さが怖いから離れたいのか、わからなくなることがあります。回避型の距離の取り方は回避型の恋愛や回避型の感情の閉じ方で扱っています。

恐れ回避型 × 特性 — 振り子が大きくなる

恐れ回避型は、近づきたい気持ちと近づくことへの怖さを同時に抱える型です。ここに衝動性の特性が重なると、勢いよく近づいては、急に離れる、という振り子の振れ幅が大きくなりやすいと考えられます。近づきたいのに怖い心理や熱しやすく冷めやすい関係も参考になります。

恋人・夫が「発達障害かも」「回避型かも」と迷うとき

雨の窓辺のテーブルに、少し離して置かれた二つのマグカップ
同じテーブルにいても、距離の理由は人によって違う。相手の名前を探す前に、自分が何に困っているかを見る。

「発達障害の夫」「ASDの彼氏」「回避型の彼」。恋愛や夫婦の悩みで検索すると、この三つの言葉が入り混じって出てきます。共感してくれない、話がかみ合わない、急に一人になりたがる。どれも、発達の特性でも、回避型の傾向でも、あるいは単なる疲れや関係の冷え込みでも起こりうる行動です。

相手を診断しないことが、最初の一歩

まず押さえたいのは、パートナーの行動から、あなたが相手を診断することはできないということです。発達障害の評価には幼いころからの発達歴が欠かせず、愛着スタイルも、本人の内側の体験を聞かないとわかりません。「あなたはASDだと思う」「回避型だから直して」と相手に告げることは、多くの場合、関係をさらに硬くします。詳しくは彼氏が「愛着障害かも」と感じたらで、代理診断をしないための考え方をまとめています。

名前より先に、「何に困っているか」を言葉にする

相手のラベルを探すより、自分が何に困っているかを具体的にするほうが、関係は動きやすくなります。「気持ちを話したときに、正論だけが返ってくるとつらい」「予定を急に変えられると困る」「週末に一人の時間を取りたいなら、先に言ってほしい」。こうした言葉は、相手が発達の特性を持っていても、回避型の傾向を持っていても、どちらにも届きやすい伝え方です。伝え方の工夫は回避型とのコミュニケーションや不安型の伝え方でも、そっけない態度に悩むときの受け止め方は彼氏がそっけないときでも扱っています。

「どちらか」より「何が効くか」で見る

相手の行動の背景がどの層にあるかは、試した工夫の効き方から見えてくることもあります。予定を事前に共有する、話し合いを文字にする、議題を一つに絞る、といった見通しを整える工夫で楽になるなら、特性の面が関わっている可能性があります。反対に、安心を積み重ねる言葉、急かさない態度、距離を取っても責めないことで少しずつ近づいてくるなら、愛着の面が関わっている可能性があります(当サイトの整理)。

回避型の傾向とASDの特性 — 恋愛での見分けの考え方

「回避型 発達障害」という組み合わせで調べる人がとくに知りたいのは、恋人や夫の冷たさが、回避型の傾向なのか、ASDの特性なのか、ということでしょう。確定はできないことを前提に、観察のポイントを並べます(当サイトの整理)。

場面回避型の傾向で起きやすいことASDの特性で起きやすいこと
付き合い始め最初は積極的で優しい。関係が深まるほど距離を取り始める最初から一貫したペース。関係の段階で態度が大きく変わりにくい
あなたが泣いたとき気づいているが、どう応えていいかわからず固まる・その場を離れる泣いている理由が読み取れず、解決策や事実確認で返す
将来の話結婚や同棲の話になると話題をそらす・不機嫌になる具体的な計画や条件を淡々と確かめる
一人の時間近さを感じた直後に、一人になりたがる人と会ったあと、刺激で疲れて一人で休みたがる
職場や友人との関係表面的にはそつなくこなすことが多い親密さに関係なく、やりとりの負担や独特のペースが見られる
幼いころの様子とくに目立たないことも多い発達歴に、こだわりや対人のやりとりの特徴が見つかることが多い

「関係が深まるほど」変わるかどうか

表の中でいちばん手がかりになりやすいのは、関係が深まるにつれて態度が変わるかどうかです。回避型の傾向は、親密さが増したときに強く働くため、付き合い始めと数か月後で別人のように見えることがあります。一方、ASDの特性による距離やペースは、関係の深さにかかわらず比較的一貫していることが多いとされます。ただし、両方を持っている人もいるので、これも決め手にはなりません。回避型の行動の見立ては回避型の見極め方、回避型の男性像は回避型男性の恋愛パターンも参考にしてください。

どちらであっても、あなたの寂しさは本物

相手の行動の背景が何であれ、あなたが寂しい、わかってもらえないと感じていることは、それ自体が大切な事実です。「相手は発達障害だから仕方ない」「回避型だから待つしかない」と、自分の気持ちを後回しにし続ける必要はありません。夫婦の関係の揺れについては回避型の夫婦関係や愛着スタイル別の夫婦関係で、組み合わせごとに書いています。

「カサンドラ」という言葉と、パートナーの側の苦しさ

発達の特性を持つパートナーとの関係で、意思疎通がうまくいかず、孤立感や心身の不調を抱える状態を指して、「カサンドラ症候群」という言葉が使われることがあります。

正式な診断名ではない

カサンドラ症候群は、医学の正式な診断名ではありません。この言葉は、パートナーとの関係の中で苦しんでいる側の経験に名前を与えるうえで役立つ一方、相手をASDと決めつけることにもつながりやすいという面があります。言葉の扱いと相談先は「カサンドラ症候群」とはで、公的な窓口とあわせてまとめています。

相手の診断より、自分の心身を先に

眠れない、食欲がない、気分の落ち込みが続く、といった状態は、相手が何者であるかに関係なく、あなた自身が相談してよい理由になります。相手の特性が確定しなくても、あなたの苦しさは医療や心理支援の対象になりえます。関係の中で暴言や威圧、行動や金銭の制限がある場合は、相手の特性の理解や話し合いの工夫より、安全の確保が先です。

子どもについて気になったとき

「うちの子は発達障害なのか、それとも私の育て方のせいで愛着に問題があるのか」。親として、これほど苦しい問いはないかもしれません。

「育て方のせい」と決める前に

まず知っておいてほしいのは、医学の診断名としての反応性アタッチメント症は、深刻なネグレクトや施設での剥奪など、著しく不十分な養育を前提にしているということです。仕事が忙しくて一緒にいる時間が短い、つい怒鳴ってしまったことがある、といった多くの親が経験することで起きる状態ではありません。そして、ADHDやASDは、育て方によって生まれるものではありません。発達の特性のある子は、育てるのに工夫が要るぶん、親が疲れ果ててしまうことが多いのです。

相談の場で伝えるとよいこと

  • 気になる行動が、いつごろから、どんな場面で見られるか(家庭・園や学校・祖父母の家など)
  • 乳幼児健診で何か言われたことがあるか。ことばや運動の発達の経過
  • 家庭の中で大きな変化(引っ越し、きょうだいの誕生、離婚、入院など)があったか
  • 親自身がいま、眠れない、気持ちが限界だと感じているか

最後の項目はとても大切です。親の疲れは、子どもの評価と同じくらい支援の対象です。自治体の子育て相談窓口や保健センターでは、子どもの発達の相談と一緒に、親の相談もできます。親自身の愛着の傾向が子育てにどう出るかは回避型の子育てや不安型のママも参考になります。親子の愛着の育ち方は愛着を育てる子育てや親の愛着スタイルが子どもに与える影響でも扱っています。

子どもの愛着は、あとからでも育つ

ルーマニアの養子研究でも、施設にいた期間が6か月未満だった子どもたちは、英国の対照群と同じくらい低い症状の水準でした。そして、6か月以上施設にいた子どもでも、5人に1人はどの時点でも問題が見られませんでした。子どもの心は、安定した関係の中で回復する力を持っています。いまからでも、子どもが安心して甘えられる時間を増やすことには意味があります。安心できる居場所の考え方は安全基地とはで詳しく書いています。

自分について気になったとき — 整理の5ステップ

霧のかかった並木道を一人で歩く人の後ろ姿
答えを急がず、困っている場面を一つずつ整理するところから。

「自分は発達障害なのか、愛着の問題なのか」が気になったとき、いきなり答えを出そうとしなくて大丈夫です。相談につなげるための整理の手順を、五つに分けました(当サイトの整理)。

01

いちばん困っている場面を一つ決める

「仕事の締め切りが守れない」「恋人との連絡で毎回もめる」「人と会ったあと数日寝込む」など、いちばん生活に響いている場面を一つだけ選びます。全部を一度に整理しようとすると、どの層の話かがかえって見えなくなります。

02

その場面が「誰の前で」起きるかを書く

恋人の前だけか、職場でも家族の前でも起きるか。親密な相手の前で強くなるなら愛着の面、どの相手でも起きるなら特性の面が関わっている可能性がある、という手がかりになります。

03

子どものころの手がかりを集める

通知表の所見欄、母子手帳、家族から聞いた幼いころのエピソードなど。家族に確かめるのがつらい、危険だと感じる場合は、無理に聞かなくてかまいません。「わからない」も、そのまま専門家に伝えられる情報です。

04

二週間だけ記録する

困った場面、直前のきっかけ、そのとき頭の中で起きたこと、回復までの時間、効いた工夫を、一日一行で書きます。診断名の候補を書く欄は作りません。記録は、チェックリストの点数より、相談の場でずっと役に立ちます。

05

記録を持って相談する

生活への影響が続くときは、記録を持って医療機関や相談窓口へ。「発達の面と、人間関係の不安の面の両方が気になっている」と、そのまま伝えてかまいません。

セルフチェックは入口として使う

当サイトのADHD傾向セルフチェック、ASD傾向セルフチェック、HSP傾向セルフチェック、そして愛着MBTI診断は、どれも診断ではなく、自分の傾向を言葉にするための入口です。それぞれ尺度も設問数も違うため、点数を並べて「いちばん高いものが自分の正体」と読むことはできません。点数より、どの設問で強く「はい」と答えたかを相談のメモに書き写すほうが役に立ちます。

自己診断しないための注意

ネットには「愛着障害チェック」「大人の発達障害チェック」があふれています。自分の状態に名前がつくと、ほっとする気持ちはよくわかります。けれど、自己診断にはいくつかの落とし穴があります。

ありがちな自己判断何が危ういか代わりにできること
「回避型だから、発達障害ではない」特性への支援や工夫を受ける機会を逃す困りごとが続くなら、発達の面も含めて相談する
「ADHDの診断は誤診で、本当は愛着障害」治療や支援を自己判断でやめてしまう主治医に、愛着の面も気になっていると伝えて相談する
「子どもの落ち着きのなさは、私の愛情不足のせい」親が自分を責め続け、疲れ果てる。子どもの特性への支援が遅れる自治体の子育て相談や発達相談で、親の疲れも含めて話す
「夫はASDだから、何を言っても無駄」自分の苦しさを後回しにし続ける。相手との対話の工夫も閉ざす自分の心身の不調として相談する。相手を診断せずに困りごとを伝える
「チェックで高得点だったから確定」ネットの質問票は診断の道具ではない。ほかの原因(うつ、不安、睡眠不足、身体の病気)を見落とす点数ではなく、困っている場面と経過をメモして相談する

ほかの原因が隠れていることもある

注意が続かない、気分が揺れる、人づきあいがつらい、といった状態は、うつ病、不安症、睡眠の問題、甲状腺など身体の病気、薬やアルコールの影響などでも起こります。最近になって急に始まった変化や、強い身体症状があるときは、発達や愛着の話より先に、医療機関で身体と心の状態を確かめてください。生まれつきの感受性の強さ(HSP)と愛着の違いはHSPと愛着障害の違いで扱っています。

ラベルは「支援につなぐ道具」として使う

診断名や愛着スタイルの呼び名は、自分を責めずに困りごとを説明するための道具として、とても役に立ちます。けれど、ラベルが「自分はこういう人間だから変われない」という結論になってしまうと、道具が檻になります。ラベルは、どんな工夫や支援が合うかを考えるための出発点として使ってください。

相談先の選び方

愛着と発達の両方が気になるとき、どこに相談すればいいのでしょうか。困りごとの種類ごとに、代表的な相談先をまとめます。

窓口こんなときに費用
発達障害者支援センター本人や家族の発達の特性について相談したい。診断の有無にかかわらず相談できる無料
精神保健福祉センター・保健所心の不調や、どこに相談すればいいかわからないときの入口無料
市区町村の子育て相談窓口・保健センター子どもの発達や親子関係、親自身の疲れについて相談したい無料
児童相談所(189)子どもへの虐待やネグレクトが心配なとき無料
児童精神科・小児科(発達外来)子どもの発達の評価を受けたい保険診療
精神科・心療内科(大人の発達外来)大人のADHD・ASDの評価を受けたい。眠れない、落ち込みが続く保険診療(心理検査やカウンセリングは保険外のことも)
警察相談専用電話(#9110)・DV相談ナビ(#8008)パートナーからの暴力・脅し・監視・金銭の制限がある相談は無料(通話料はかかる)
心理職の資格を明記したカウンセラー、当サイトの相談室恋愛や夫婦の関係、愛着の不安を言葉にして整理したい相談ごとに有料

公的な窓口の探し方

全国の発達障害者支援センターは、国立障害者リハビリテーションセンターの一覧から探せます。心の不調が切迫しているときの相談先は、厚生労働省「まもろうよ こころ」にまとまっています。大人の発達外来は予約が数か月先になることもあるため、待っている間は精神保健福祉センターなどで先に話を聞いてもらうのも一つの方法です。

「診断」と「カウンセリング」は役割が違う

心理職に話を聞いてもらう場では、国家資格の公認心理師や、臨床心理士の資格がプロフィールに書かれているかを確かめましょう。「愛着障害も発達障害もこの方法で治る」と言い切る広告や、初回から何十回分もの前払いを求める契約には注意が必要です。なお、発達の特性の診断は医師が行うもので、カウンセリングだけでは診断はつきません。選び方は愛着の悩みの相談先やカップルセラピーを検討するときでもまとめています。

当サイトの診断データから見えること

当サイトの愛着MBTI診断で集計した48,423件(2026年9月27日時点。詳細は愛着×性格の実測データ)を愛着の傾向で分けると、恐れ回避型が19,711件(40.7%)と最多で、安定型14,537件(30.0%)、不安型7,536件(15.6%)、回避型6,639件(13.7%)と続きます。約7割が安定型以外の傾向を持ち、とくに近づきたいのに怖い恐れ回避型が最も多いという分布です。人との距離や感情の揺れに悩み、その理由を探している人が多く訪れていることと矛盾しない数字です(考察)。

性格検査も一緒に受けた6,600件に絞ると、神経症傾向(気分の揺れやすさ)と愛着不安のあいだに r = 0.57 という比較的はっきりした正の相関が出ています。感情の揺れやすさと、関係への不安の強さが、同じ人の中で重なりやすいことを示しています。感情の起伏を「発達の特性」か「愛着」かのどちらか一方で説明しきれない理由の一つと読めます(考察)。性格の側面との関係は神経症傾向と愛着でも扱っています。

恐れ回避型 40.7% 安定型 30.0% 不安型 15.6% 回避型 13.7%
図2 愛着4タイプの内訳(当サイトの診断 48,423件・2026年9月27日時点。出典: 愛着×性格の実測データ)。一般人口の分布ではありません。

集計の限界

  • 受検者は恋愛や人間関係の悩みから当サイトにたどり着いた人が中心で、日本の成人全体を代表する標本ではありません
  • 設問は本人の回答だけにもとづく簡易版で、研究用の標準尺度とも、医師の診断とも性質が違います
  • ADHD・ASDの診断歴は質問していないので、このデータから「発達の特性がある人に多い愛着の型」は言えません
  • 相関は同じ人の中で二つの傾向が重なりやすいことを示すだけで、どちらが原因かは示しません

公的な調査の数字を読むときの注意

発達の特性についてよく引用される数字に、文部科学省の2022年の調査で、公立小中学校の通常の学級に「学習面または行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒が8.8%だった、というものがあります。ただしこれは担任の先生などによる回答にもとづく推定で、医師の診断による数字ではありません。文部科学省自身も、発達障害のある児童生徒の割合を示すものではないと説明しています。数字を「8.8%が発達障害」と読みかえないよう注意が必要です。

よくある質問

Q. 愛着障害と発達障害のいちばんの違いは何ですか?

医学の診断名としての愛着障害(反応性アタッチメント症・脱抑制型対人交流症)は、著しく不十分な養育を背景に、特定の大人との愛着が育たなかった子どもの状態で、「心的外傷およびストレス因関連」の章に置かれています。発達障害(ADHD・ASDなど)は、幼いころから存在する脳の発達の特性で、「神経発達症」の章に置かれています。一方、ネットで言う「大人の愛着障害」の多くは、診断名ではない愛着スタイルの話です。

Q. 愛着障害と発達障害は併発しますか?

層によって答えが違います。DSM-5・ICD-11では、ASDの基準を満たす場合は反応性アタッチメント症とは診断しない決まりです。一方、深刻な剥奪を経験した子どもが、自閉症に似た症状や不注意・多動の症状を大人まで持ち続けることは研究で示されています。また、ADHDやASDの特性がある人が、大人の愛着スタイルとして不安型や回避型の傾向を持つことは珍しくありません。

Q. ADHDと愛着障害はどう見分けますか?

一つの行動だけでは見分けられません。専門家は、症状が12歳より前から複数の場面で見られたか、どんな養育の経過があったか、安心できる相手との関係で行動が変わるか、などを総合して評価します。自分で整理するときは、「いつから」「どの相手の前で」「何がきっかけで」起きるかを記録しておくと、相談のときに役立ちます。

Q. 愛着障害がADHDやASDと誤診されることはありますか?

虐待やネグレクトを受けた子どもがADHDやASDによく似た姿を示すことがあり、評価が難しい場合があるのは事実です。ただし、子どもの発達とともに見立てが更新されるのは、必ずしも誤りではありません。気になるときは、自己判断で治療や支援をやめず、主治医に「愛着の面も含めて見てほしい」と伝えてください。

Q. 大人になってから愛着障害と診断されることはありますか?

反応性アタッチメント症などは子どもの時期に始まる状態として定義されていて、大人に新しくつける診断名としては基本的に想定されていません。大人の人間関係の悩みは、愛着スタイルの傾向や、うつ・不安・トラウマ、発達の特性など、具体的な困りごとに合わせて評価されます。大人のADHD・ASDは、医療機関で評価を受けることができます。

Q. 夫(彼氏)が発達障害なのか回避型なのかわかりません

パートナーの行動から相手を診断することはできません。手がかりとしては、関係が深まるほど距離を取るようになったか(回避型の傾向で起きやすい)、関係の深さにかかわらず一貫したペースか(発達の特性で起きやすい)などがありますが、両方を持つ人もいます。ラベルより、自分が何に困っているかを具体的に伝えるほうが関係は動きやすく、あなた自身の心身の不調は、相手の診断と関係なく相談できます。

Q. 子どもの落ち着きのなさは、私の育て方のせいですか?

ADHDやASDは育て方によって生まれるものではありません。また、医学の診断名としての愛着障害は、深刻なネグレクトなど著しく不十分な養育を前提にしたもので、多くの親が経験する忙しさや叱りすぎで起きる状態ではありません。自分を責め続けるより、自治体の子育て相談や発達相談で、親の疲れも含めて話してみてください。

Q. 「第四の発達障害」とは何ですか?

児童精神科医の杉山登志郎さんが著書『子ども虐待という第四の発達障害』(学研、2007年)で示した考え方で、虐待を受けた子どもが発達障害によく似た姿を示し、発達の道筋そのものが大きな影響を受けることを訴えたものです。DSMやICDの診断名ではなく、臨床からの問題提起の言葉として読むのが適切です。

出典と確認範囲

  • DSM-5の変更点(反応性愛着障害の二分割、ADHDの発症年齢の条件と成人の症状数、ASDとの併存診断): American Psychiatric Association. Highlights of Changes from DSM-IV-TR to DSM-5(2013)。
  • DSM-5の反応性愛着障害の基準の要約(ASDの基準を満たさない、5歳より前、発達年齢9か月以上): 各種の公開要約で確認。診断基準の全文は掲載していません。
  • ICD-11: World Health Organization. 6B44 Reactive attachment disorder/6B45 Disinhibited social engagement disorder(Disorders specifically associated with stress)の要約。
  • 日本語名称: 日本精神神経学会「DSM-5 病名・用語翻訳ガイドライン」ほか。DSM-5-TR日本語版での名称は反応性アタッチメント症・脱抑制型対人交流症。
  • 有病率: Minnis, H., et al. (2013). Prevalence of reactive attachment disorder in a deprived population. British Journal of Psychiatry, 202(5), 342–346.
  • 剥奪と自閉症に似たパターン: Rutter, M., et al. (1999). Quasi-autistic patterns following severe early global privation. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 40, 537–549.
  • 成人期までの追跡: Sonuga-Barke, E. J. S., et al. (2017). Child-to-adult neurodevelopmental and mental health trajectories after early life deprivation. The Lancet, 389(10078), 1539–1548.
  • 自閉症と愛着: Rutgers, A. H., Bakermans-Kranenburg, M. J., van IJzendoorn, M. H., & van Berckelaer-Onnes, I. A. (2004). Autism and attachment: a meta-analytic review. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 45(6), 1123–1134.
  • ADHDと愛着: Storebø, O. J., Rasmussen, P. D., & Simonsen, E. (2016). Association between insecure attachment and ADHD: Environmental mediating factors. Journal of Attention Disorders, 20(2), 187–196.
  • 第四の発達障害: 杉山登志郎『子ども虐待という第四の発達障害』学研(2007年)。
  • 一般向けの「愛着障害」: 岡田尊司『愛着障害 — 子ども時代を引きずる人々』光文社新書(2011年)。
  • 通常の学級の調査: 文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)」。
  • 当サイトの実数: 愛着×性格の実測データ(2026年9月27日時点)。
  • 文献は2026年9月27日に要旨と書誌情報を確かめたものです。本文は医療の診断・治療の代わりにはなりません。監修は臨床心理士。

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📋 この記事について
執筆・編集
愛着MBTI編集部(一般向けの自己理解情報を制作)
監修
臨床心理士 大金令弥。運営・編集責任者本人が監修しています。監修は、タイプの推定や診断の精度を実証するものではなく、医学的な診断・治療ではありません。
最終更新
2026年9月27日
根拠の扱い
本文中に個別の出典リンクがある記述のみ、その資料に基づく説明です。出典が示されていない記述には編集部による整理・解釈が含まれ、研究で確認された事実を示すものではありません。タイプ判定は傾向の整理であり、個人の行動や将来を言い当てるものではありません。
ご注意
本記事は医学的な診断・治療にあたるものではありません。気分の落ち込みや対人関係の困難が続く場合は、医療機関や心理カウンセリングへのご相談をご検討ください。

🔗 本記事のデータ・図表を引用する際は、出典として「愛着MBTI(mbti-svaf.com)」を明記のうえ、該当ページへのリンクをお願いします。