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愛着の基礎知識

愛着障害の原因は親だけ? 4つの愛着スタイルが幼少期の家庭環境とその後の出来事から形づくられるしくみ

── 「親のせい」でも「生まれつき」でもない。研究でわかっていることと、まだわかっていないこと

愛着障害の原因は親以外にも?4タイプの幼少期と家庭環境

「愛着障害の原因は、やっぱり母親なのだろうか」「回避型になったのは、幼少期の家庭環境のせい?」「親は普通だったのに、なぜ自分は恐れ回避型なのか」。愛着について調べ始めた人の多くが、いつかこの問いにたどり着きます。検索すると「親の愛情不足」「母親との関係」という言葉がたくさん出てきて、納得する人もいれば、どこか腑に落ちない人もいるはずです。

先に結論を書きます。愛着スタイル(安定型・不安型・回避型・恐れ回避型)が形づくられるうえで、幼いころの養育者の応じ方は大きな要素です。けれど研究の数字で見ると、親の関わり方で説明できるのは一部にとどまり、家族の外の人間関係、思春期や大人になってからの恋愛、喪失や転居といった出来事も型を動かします。遺伝や生まれつきの気質の影響は、少なくとも乳幼児期については小さいとされています。そして型は、大人になってからも変わりえます。

この記事では、「親のせい」と決めつけることも、「生まれつきだから仕方ない」とあきらめることもせずに、愛着の型が何から形づくられるのかを、研究でわかっている範囲で最後まで整理します。型ごとに語られる幼少期の家庭環境、親以外の原因、自分の過去を振り返るときの注意、そしてこれから型を変えていく方法まで扱います。

読む前に。本文に出てくる4つの型の名前は、親密な関係での傾向を研究者が分類したもので、病院でつく病名とは違います。子どもについて専門家が評価する医学上の愛着障害(反応性アタッチメント障害など)とも、枠組みが別です。本文では、論文で確かめた数字と当サイトの診断の実数を事実、愛着理論をもとにした編集部の読み解きを考察(臨床心理士の監修つき)、研究で決着していないことやあなたの過去についての見立てを未確定として、区別がつくように書きました。

子ども時代をたどる作業は、忘れていた場面を連れてくることがあります。途中で胸が苦しくなったら、読むのをやめて休んでください。原因探しより先にすべきなのは、いまの身の安全です。家族や恋人に殴られる、脅される、行動やお金を見張られているなら、#9110(警察の相談窓口)やDV相談ナビにつないでください。子どもが危ないと感じたら189(児童相談所)です。不眠や食欲の低下、沈んだ気分が半月以上続くようなら、心の不調として医療や公的窓口に相談を。

この記事でわかること

  • 愛着スタイルの土台になる「養育者の敏感さ」とは何か。エインズワースの観察研究から
  • 親の関わり方で説明できるのはどのくらいか。66研究・95サンプルをまとめた数字と「伝達のすきま」
  • 遺伝や生まれつきの気質はどのくらい関係するのか。乳児と思春期の双生児研究の違い
  • 安定型・不安型・回避型・恐れ回避型ごとに語られる幼少期の家庭環境(断定しない整理)
  • 親以外の原因。きょうだい、祖父母、両親の離婚、保育、いじめ、思春期の恋愛、死別、転居、トラウマ
  • 型は大人になっても変わるのか。20年追跡した研究で、つらい出来事があった人の型は約2倍変わりやすかった
  • 自分の過去を振り返るときの注意(記憶の偏り、責めることと理解することの違い)と、型を変えていく方法

先に結論 — 愛着の型は「親だけ」で決まらない

愛着の原因について、研究でわかっていることを5行にまとめると、次のようになります。細かい根拠は後の節で一つずつ示します。

  1. 幼いころの養育者の応じ方(敏感さ)は、子どもの愛着の安定と結びついている。ただし結びつきの強さは「中くらい」で、それだけで決まるわけではない。
  2. 親自身の愛着の状態は子に受け渡されやすいが、その道筋を親の敏感さだけでは説明しきれない(伝達のすきま)。
  3. 遺伝の寄与は、乳児期には小さく、思春期にはある程度見られるという報告がある。生まれつきの気質と大人の愛着は、ほとんど関係しなかったという長期研究もある。
  4. 親以外の人間関係と出来事も型を動かす。親友との関係の質、両親の離婚、喪失、つらい出来事の経験などが、後の愛着と結びついている。
  5. 型は中程度に安定しているが、変わる。つらい出来事があると変わりやすく、安定した関係の中では安定の方向へ動きやすい。

「原因」より「形づくった条件」と考える

この記事では、あえて「原因」という強い言葉を少し言い換えて、型を形づくった条件と呼ぶことがあります。愛着は、一つの出来事が一つの型を生むような単純なものではなく、たくさんの関係と出来事が長い時間をかけて積み重なった結果だからです(考察)。一つの犯人を見つけるより、自分の型がどんな条件の中で「その場で生き延びるための工夫」として身についたのかを見るほうが、変えていくときの手がかりになります。

この記事と、母親との関係の記事の違い

母親との関係に絞った話は愛着障害と母親の関係に、母と娘の境界線の話は母娘のバウンダリーに書いています。この記事は、それより広く、母親以外も含めた原因の全体を扱います。

「愛着障害」と「愛着スタイル」は別の話

「愛着障害 原因」と検索する人の多くは、実際には医学的な診断ではなく、大人の恋愛や人間関係の中で感じる生きづらさの理由を探しています。ここで言葉を整理しておきます。

言葉何を指すか誰が判断するかこの記事での扱い
医学の愛着障害(反応性アタッチメント障害など)著しく不十分な養育などを背景に、子どもに見られる対人関係の問題児童精神科などの専門家原因を自己判断しない。気になるときは専門家へ
愛着スタイル(安定・不安・回避・恐れ回避)親密な関係での不安と回避の傾向。誰にでもある個人差質問紙や面接による心理学の測定この記事の中心。「何から形づくられるか」を扱う
日常語の「愛着障害」愛着の不安定さからくる生きづらさを広く指す言い方本人の実感検索の言い方として受け止め、愛着スタイルの話として整理する

医学の愛着障害の原因を、大人の自分に当てはめない

医学の愛着障害は、施設での養育や、極端なネグレクトのような「著しく不十分な養育」を前提に考えられてきました。大人になって「自分は愛着障害かもしれない」と感じる人の多くは、そこまでの経験をしていなくても、恋愛で強い不安や回避に苦しんでいます。その苦しさは本物ですが、医学の診断基準の原因をそのまま自分に当てはめる必要はありません。違いは愛着障害と愛着スタイルの基礎や愛着の問題と発達特性の違いで詳しく整理しています。

型別の「愛着障害」という言い方

当サイトでは、日常語としての「愛着障害」を型ごとに整理した記事もあります。不安型愛着障害、回避型愛着障害、恐れ回避型愛着障害です。4つの型そのものの見分け方は愛着スタイルの4分類へ。

愛着の土台 — 養育者の「敏感さ」とは

愛着理論をつくったのは、イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィ(Bowlby, 1969)です。ボウルビィは、子どもがおびえたり困ったりしたときに特定の大人へ近づこうとする仕組みを愛着(アタッチメント)と呼び、その大人とのやりとりから「人は頼れるか」「自分は助けてもらえる存在か」という心の見取り図(内的作業モデル)が作られると考えました。

エインズワースが家庭で見たもの

その考えを観察で確かめたのが、アメリカの心理学者メアリー・エインズワースです。彼女のチームは米国ボルチモアの家庭へ赤ちゃんが1歳になるまで何度も通い、母親が赤ちゃんのサインにどう応じるかを記録しました。そのうえで、1歳前後の子どもを見知らぬ部屋で母親と短く離れさせるストレンジ・シチュエーション法で、再会したときの子どものふるまいを観察しました(エインズワースら, 1978)。

その結果、赤ちゃんのサインに気づき、意味を正しく読み取り、すばやく、ちょうどよく応じていた母親の子どもほど、再会のときに素直に近づいて落ち着く「安定型」になりやすいことが示されました。この応じ方の質を敏感さ(sensitivity)と呼びます。

敏感さの4つの要素

要素意味日常の例欠けたときに子が学びやすいこと(考察)
気づく子のサインに気づくぐずり始めた小さな声に顔を上げる「出しても届かない」
読み取るサインの意味を正しく読む眠いのか、お腹がすいたのか、こわいのかを見分ける「わかってもらえない」
すばやくほどよい速さで応じる泣き続ける前に抱き上げる「大きく騒がないと来てもらえない」
ちょうどよく子の必要に合った量と形で応じる落ち着いたら下ろして遊びに戻す「近すぎても遠すぎても苦しい」

「完璧な親」が必要なわけではない

敏感さという言葉を聞くと、いつも子どもの気持ちを正しく読む完璧な親を思い浮かべるかもしれません。けれど、どんな親でもサインを見落とすことはあります。大切なのは、見落としやすれ違いがあっても、全体としては「困ったら来てくれる」と子どもが予想できること、そしてすれ違ったあとに関係が修復されることだと考えられています(考察)。子育ての側から見た話は愛着を育てる子育てにまとめています。

親の関わり方で説明できるのは一部 — 数字で見る

では、親の敏感さは子どもの愛着をどのくらい説明するのでしょうか。ここは「親のせい」と考えるかどうかに直結する大事な数字なので、確かめた論文の値だけを並べます。

66研究をまとめると、結びつきは r = .24

1997年、オランダのデ・ウォルフとファン・アイゼンドールン(De Wolff & van IJzendoorn, 1997)は、親の関わりと乳児の愛着を調べた66研究(合計4,176人)をまとめました。そのうち、ストレンジ・シチュエーション法と観察による敏感さの測定を使った一般の家庭の21研究では、敏感さと愛着の安定の結びつきは r = .24 でした。著者たちはこれを「中程度」とし、敏感さは愛着の安定にとって重要だが、唯一の条件ではないと結論づけています。

親の愛着は子に受け渡されるが、「すきま」がある

親が自分の子ども時代をどう語るか(成人愛着面接)と、その子の愛着の結びつきも調べられてきました。2016年に発表されたメタ分析(Verhage et al., 2016)では、世界の95サンプル・4,819組を集計し、親の安定と子の安定の結びつきを r = .31 と報告しました。20年前のまとめ(r = .47)より小さな値です。さらに、この受け渡しは親の敏感さだけでは説明しきれませんでした。この説明できない部分を、研究者は伝達のすきま(transmission gap)と呼んでいます。

研究まとめた規模何と何の結びつきか値読み取れること
De Wolff & van IJzendoorn(1997)66研究・4,176人(うち21研究・1,099人)母親の敏感さ → 乳児の愛着の安定r = .24重要だが唯一の条件ではない
Verhage ほか(2016)4,819組(95サンプル)親の愛着の安定 → 子の愛着の安定r = .31受け渡しはあるが中くらい。敏感さだけでは説明しきれない
Fraley(2002)1歳から19歳までの追跡研究のまとめ1歳の安定 → その後の安定ρ = .39(最もよく合うモデルの値)型は中程度に続くが、変わる余地も大きい
どれも「中くらい」の結びつき 親の敏感さ → 子の安定 .24 親の安定 → 子の安定 .31 1歳の型 → 19歳まで .39 1.0=完全に決まる
愛着の原因と続きやすさに関する3つの数字(De Wolff & van IJzendoorn, 1997/Verhage ほか, 2016/Fraley, 2002)。棒の長さは値に比例。1.0 の「完全に決まる」にはどれも遠い。

r = .24 や .31 をどう読むか

r は「何割の家でそうなるか」という割合ではなく、片方が高いともう片方も高くなりやすいか、という連動の度合いです。1.0 なら片方でもう片方が完全に決まり、0 ならまったく連動しません。心理学では .2〜.3 は決して小さくない値ですが、同じような親に育てられても違う型になる人、違う親に育てられても同じ型になる人が大勢いることも意味しています。ここに、親以外の条件が入り込む余地があります。

遺伝や生まれつきの気質はどのくらい関係するか

「親の育て方ではなく、生まれつきの性格なのでは」という疑問もよく聞きます。これを確かめる方法の一つが、遺伝子がほぼ同じ一卵性双生児と、半分ほど同じ二卵性双生児を比べる双生児研究です。

乳児期 — 遺伝の影響はほとんど見られなかった

オランダのボクホルストら(Bokhorst et al., 2003)は、157組の双子の乳児を調べました。安定か不安定かの違いのうち、52%は家庭で共有する環境、48%は一人ひとり固有の環境と測定の誤差で説明され、遺伝の影響は見られませんでした。つまり乳児期の愛着は、少なくともこの研究では、生まれつきより環境で説明されていました。

思春期 — 遺伝の影響が見えてくる

一方、イギリスのフィアロンら(Fearon et al., 2014)が15歳の双子551組を調べた研究では、愛着の安定の違いの35〜38%程度が遺伝で説明され、家庭で共有する環境の影響はほとんど見られませんでした。乳児期と思春期で結果が逆のように見えるのは、年齢とともに、子どもが自分の性質に合った関係や環境を自分で選び、引き出すようになるためではないかと考えられています(研究者の解釈。未確定)。

気質と大人の愛着は、ほとんど関係しなかった

アメリカで子どもを生まれてから追跡した大規模研究(NICHD の早期保育研究)の18歳時点のデータを分析したフレイリーら(Fraley, Roisman, Booth-LaForce, Owen & Holland, 2013)は、大人の愛着の違いが、養育環境の質、育っていく社会的な力、そして親友との関係の質にさかのぼれることを報告しました。一方で、乳幼児期に測った気質や、これまで話題になってきた遺伝子の多くは、大人の愛着とほとんど関係していませんでした(一つの遺伝子だけが愛着不安とわずかに関係)。

研究対象わかったことこの記事での読み方
Bokhorst ほか(2003)双子の乳児 157組共有環境 52%・固有の環境と誤差 48%。遺伝は見られず乳児期の型は、生まれつきより環境で説明される
Fearon ほか(2014)15歳の双子 551組遺伝 35〜38%程度。共有環境はほぼなし年齢が上がると本人の性質の寄与が見えてくる
Fraley ほか(2013)生まれてから18歳まで追跡した子ども養育の質・社会的な力・親友との関係の質が大人の愛着と関係。気質はほぼ無関係親以外の関係(友だち)も原因の一部

敏感な気質の人は、環境の影響を受けやすいかもしれない

遺伝の直接の寄与が小さいとしても、刺激に敏感な人ほど、よい環境からも悪い環境からも影響を受けやすいという考え方があります。当サイトの記事ではHSP と愛着や神経症傾向と愛着でこの重なりを扱っています。ただし、気質が型を「決める」という強い証拠はありません(未確定)。

型ごとに語られる幼少期の家庭環境

誰も座っていない椅子。そばにいても気持ちが届かなかった記憶は、いない記憶と同じくらい残ることがある
そばにいたのに届かなかった。その記憶が、型の形を決める条件の一つになることがある。

ここからは、4つの型ごとに、研究や臨床で「こういう家庭で育つと、こう身につきやすい」と語られてきた環境を整理します。先にお断りしておくと、これは傾向の話であって、決まりではありません。同じ家庭環境で育ったきょうだいが別々の型になることも、よくある環境の説明がまったく当てはまらない人がいることも、ふつうのことです。

型よく語られる養育者の応じ方子どもが身につけやすい工夫大人になって出やすいサイン
安定型一貫して応じる。困ったときに来てくれて、落ち着いたら送り出してくれる助けを求めることと、一人で探索することの両方頼ることも、距離を取ることも、あまり怖くない
不安型応じる日と応じない日のむらがある。親の気分や余裕しだいで変わるサインを大きくして、確実に気づいてもらう返事が来ないと落ち着かない。確かめたくなる
回避型甘えや弱音に冷たい・そっけない。世話はするが気持ちには触れない(情緒的な不在)助けを求めるサインを小さくして、一人で処理する頼るのも頼られるのも窮屈。平気なふりが上手
恐れ回避型安心の源であるはずの人が、同時におびえの源になる。親がおびえている、または子をおびえさせる近づくことと離れることの間で、決められない近づきたいのに近づくと怖い。関係が揺れやすい

「工夫」として身についた、と見る

どの型も、その家庭の中ではいちばん理にかなった適応だったと考えるのが愛着理論の見方です。応答にむらのある親にはサインを大きくしたほうが届くし、甘えを嫌がる親の前では甘えを引っこめたほうが関係を保てます。問題になるのは、その工夫を、条件の違う大人の関係にも持ち込んでしまうときです(考察)。

安定型の幼少期 — 一貫した応答と、送り出してくれる手

「安定型 幼少期」で調べる人は、自分やパートナーが安定型だと知って、何が違ったのかを知りたい人が多いようです。安定型の人の子ども時代について語られるのは、特別に恵まれた家庭というより、困ったときに頼れる人がいて、その人の応じ方がだいたい予想できたという経験です。

安全基地と、探索への送り出し

愛着理論では、子どもがこわいときに戻れる場所を安全基地と呼びます。安定型が育ちやすいのは、戻ってきたら受け止めてもらえ、落ち着いたらまた遊びに出ていくのを見守ってもらえる関係です。抱きしめることと、手を放すことの両方がそろっていることが大切だと考えられています。詳しくは安全基地とはへ。

安定型でも、家庭がずっと穏やかだったとは限らない

安定型の人の中にも、親の離婚や病気、経済的な苦労を経験した人はいます。そうした中でも、祖父母や先生など別の安定した大人がいた、あるいは親が失敗したあとに謝って関係を直してくれた、という経験が支えになることがあります(考察)。安定型の特徴は安定型とはにまとめています。

不安型の幼少期 — 応答のむらが「確かめ」を育てる

「不安型 幼少期」「愛着障害 不安型 原因」で語られやすいのは、親がいつも冷たかったというより、応じてくれるときと、くれないときの差が大きかったという環境です。エインズワースの観察でも、再会のときに近づきながら怒ったり、なかなか落ち着かなかったりする子どもの母親は、応じ方が一貫しない傾向があったと報告されています(Ainsworth ほか, 1978)。

よく語られる場面

  • 親の機嫌がいい日はべったり甘やかされ、疲れている日は同じことで叱られた
  • 親が忙しく、泣いたり騒いだりしたときだけ振り向いてもらえた
  • 親自身が不安の強い人で、子どもの気持ちより自分の心配を優先しがちだった
  • 「いい子にしていたら愛される」という条件つきの受け止め方を感じていた

大人になって何が残りやすいか

応じてもらえるタイミングが読めないと、子どもは相手の様子を見張り続け、サインを強めることを覚えます。大人になって、恋人の返信が遅いと落ち着かない、何度も気持ちを確かめたくなる、という形でその名残が出ることがあります。不安型の親子関係は不安型の親子関係、見捨てられる不安は見捨てられ不安、子ども時代の傷は不安型の愛着の傷で扱っています。

回避型の幼少期 — 拒否と「情緒的な不在」

「回避型 幼少期」「回避型 家庭環境」でよく語られるのは、子どもが気持ちを出したときに受け止めてもらえなかった経験です。エインズワースの観察では、再会のときに母親を避けるようにふるまう子どもの母親は、赤ちゃんが体を寄せることを嫌がったり、拒むような応じ方をしたりする傾向が報告されました(Ainsworth ほか, 1978)。

「ちゃんと育ててもらった」のに回避型になる理由

回避型の人の多くは、「親は食事も学費もちゃんと用意してくれた」「虐待されたわけではない」と話します。語られやすいのは、身の回りの世話は十分でも、悲しい、こわい、さみしいといった気持ちには触れてもらえなかったという環境です。これを「情緒的な不在」と呼ぶことがあります。泣くと「泣かないの」、弱音を言うと「そんなことで」と返される。そうした積み重ねの中で、子どもは気持ちを出さずに一人で処理するほうが安全だと学びます(考察)。

よく語られる家庭環境

家庭の様子子が受け取りやすいメッセージ(推定)大人になって出やすい形
親が感情を表に出さない家。家族で気持ちを話す習慣がない気持ちは口にしないもの恋人に「何を考えているかわからない」と言われる
「強くあれ」「自分のことは自分で」が口ぐせ頼るのは弱いこと困っても相談できない。限界まで一人で抱える
親が忙しく、話を聞く時間がほとんどない自分の気持ちは後回しでいい相手に合わせるのは得意だが、自分の望みがわからない
甘えると嫌な顔をされる・からかわれる近づくと拒まれる近づかれると息苦しく、距離を取りたくなる
成績や成果でだけほめられた何かができる自分なら受け入れられる弱みを見せると価値が下がると感じる

「回避型 男性 原因」 — 男性に回避が多い理由

回避型の男性について調べる人も多いテーマです。事実として、13歳から72歳までの628人を長く追った研究では、男性はどの年齢でも女性より愛着の回避が高い傾向がありました(Chopik, Edelstein & Grimm, 2019)。理由はまだはっきりしていませんが、「男の子は泣かない」「弱音を吐くな」と育てられやすい文化の影響が一因として考えられます(考察・未確定)。家庭だけでなく、学校や社会のしつけも回避を後押ししうるということです。男性の回避型は回避型男性の特徴、家族との関係は回避型と家族や回避型の親子関係で扱っています。

恐れ回避型の幼少期 — 安心の源が、おびえの源でもあった

「恐れ回避型 幼少期」「恐れ回避型 家庭環境」「恐れ回避型 原因」で語られるのは、ほかの型より重い環境であることが多いテーマです。ただし、恐れ回避型の人がみな虐待を受けてきたわけではありません。ここは誤解の多いところなので、ていねいに書きます。

乳児の「無秩序型」と、おびえ・おびえさせる養育

エインズワースの3分類のあと、メインとソロモン(Main & Solomon, 1990)は、再会のときに近づきかけて固まる、親に背を向けたまま近寄るといった、まとまりのないふるまいを見せる子どもを無秩序・無方向型として分けました。さらに同じ年、メインはヘッセとの共著(1990)で、その背景に、親自身がおびえている、あるいは子をおびえさせるふるまい(frightened / frightening behavior)を挙げました。子どもにとって、こわいときに逃げこむ先が、同時にこわさの源でもある。近づいても離れても安心できない、という解けない状況です。

一般の家庭でも約15%。原因はおびえだけではない

1999年のメタ分析(約80研究、6,000組超)によれば、一般的な中流家庭でも約15%の乳児に無秩序型の行動が見られ、虐待などのある環境ではその2〜3倍になることがありました。同時に著者たちは、親のおびえさせる行動は大事な要因だが、それだけが原因ではないとも述べています。親が自分の喪失やトラウマを消化しきれていないことも、関係する要因として研究されてきました。

大人の恐れ回避型は、子どもの無秩序型と同じではない

大人の恐れ回避型は、1991年にバーソロミューらが提案した大人向けの4分類に含まれる型で、「自分への見方も他者への見方も否定的」な型です。乳児の無秩序型とつながりがあると考えられていますが、同じものではありません。子ども時代の家庭が落ち着いていても、思春期以降のいじめ、恋愛での裏切り、死別などが重なって恐れ回避の傾向が強まる人もいます(考察)。家族との関わりで揺れる恐れ回避型の話は恐れ回避型と家族に、心の傷の手当ては恐れ回避型のインナーチャイルド、近づくのが怖い感覚は近づきたいのに怖いで扱っています。

いまも怖い思いをしている人へ

家族やパートナーからの暴力、脅し、監視がいまも続いている場合は、自分の型を理解するより前に、安全を確保することを優先してください。警察相談専用電話(#9110)、DV相談ナビ、子どもの安全が心配なときは児童相談所虐待対応ダイヤル(189)に相談できます。

「回避依存症」と呼ばれる人の幼少期と家庭環境

「回避依存症 幼少期」「回避依存症 家庭環境」と調べる人もいます。回避依存症は医学の診断名ではなく、親密になることを避けながら、関係そのものは手放せない状態を指す日常語です。当サイトでは回避依存症とはで詳しく整理しています。

語られやすいのは「のみこまれる」家庭

回避依存症の背景として語られやすいのは、冷たい家庭だけではありません。むしろ、親の感情の面倒を見させられた、親に干渉されすぎて自分の領域がなかった、という「近すぎる」家庭もよく挙がります。近づくと自分がのみこまれるという感覚を身につけると、大人になって、親密さを求められた瞬間に逃げたくなる一方で、相手を完全には手放せない、という揺れが起きやすいと考えられます(考察。研究で確かめられた分類ではありません)。親子の役割逆転や境界の薄さは母娘のバウンダリーやアダルトチルドレンでも扱っています。

付き合っている側ができること

パートナーの側から原因を知りたい人は、原因を突き止めて相手を変えようとするより、自分がどこまで待てるか、何なら受け入れられないかを先に決めておくほうが、自分を守れます。回避依存症の人との接し方も参考にしてください。

親以外の原因(1)家族の中のほかの関係

ここからが「愛着障害 原因 親 以外」で探している人に向けた部分です。愛着の研究は長く母親と乳児の関係を中心にしてきましたが、子どもが育つ中で関わる大人や出来事は母親だけではありません。

父親・祖父母・きょうだい

ボウルビィ自身も、子どもは複数の人に愛着を向けると考えていました。父親、祖父母、年の離れたきょうだい、同居の親戚など、母親以外に安心できる人がいたかどうかは、型を和らげる方向にも、強める方向にも働きえます。たとえば母親が不安定でも、祖母の家では安心できた人は、「頼れる人はいる」という見取り図を別に持てることがあります(考察)。逆に、きょうだいと比べられ続けた、上の子の世話を任されて甘える時期がなかった、という経験が、回避や不安の土台になることもあります。

両親の不仲と離婚

親の離婚は、記憶に頼らず比較的はっきり確かめられる出来事です。フレイリーとヘファナン(Fraley & Heffernan, 2013)は2つの大きなサンプルで、親の離婚と大人の愛着の関係を調べました。親の離婚は、恋人や友人との関係より、大人になってからの親との関係の不安定さとより強く結びついていました。また、離婚が幼いころに起きた人ほど、親との関係の不安定さが大きい傾向がありました。つまり、離婚が愛着のすべてを不安定にするわけではなく、影響には「どの関係に」「いつ」という選択性がある、ということです。

家の空気 — 夫婦げんか、病気、経済的な苦しさ

激しい夫婦げんか、親の病気や依存症、経済的な困窮なども、親が子どもに向けられる余裕を減らします。こうした状況では、同じ親でも、落ち着いていた時期と苦しかった時期で応じ方が大きく変わります。親の人柄の問題ではなく、親が置かれていた状況の問題という面もあることは、覚えておいてよいことです(考察)。

同じ家で育ったきょうだいが違う型になる理由

乳児の双生児研究で「一人ひとり固有の環境」が半分近くを占めていたように、同じ家でも、子どもによって経験は違います。生まれた順番、親の年齢や余裕、その時期の家の事情、親との相性。「同じ親なのに、なぜ自分だけ」という疑問には、この固有の環境という答えがあります。家族全体の愛着は不安型と家族や愛着と親子関係でも扱っています。

親以外の原因(2)保育、学校、友だち、いじめ

家の外で過ごす時間が増えるにつれ、先生や友だちとの関係も愛着の条件になっていきます。

保育に預けたこと自体は、原因とは言えない

「小さいころ保育園に預けたせいで」と心配する親は多いのですが、1,153人の乳児を追ったアメリカの NICHD 早期保育研究(NICHD Early Child Care Research Network, 1997)では、保育の量や質、始めた年齢、形態そのものには、愛着の安定への主な影響は見られませんでした。影響が見られたのは、母親の敏感さが低いことに、質の低い保育、長時間の保育、預け先の度重なる変更などが重なったときでした。預けるかどうかより、家庭での応じ方と、保育の安定が組み合わさってはたらくということです。

親友との関係の質

先に紹介したフレイリーら(2013)の長期研究では、大人の愛着の違いが、養育の質に加えて子ども時代の親友との関係の質とも関係していました。親以外の人との間で「わかってもらえた」「一緒にいて安心できた」経験を持てたかどうかも、原因の一部だということです。反対に、友だちとの関係でつまずき続けた経験は、人を信じにくくする方向に働きえます。友人関係と愛着は愛着と友人関係へ。

いじめと仲間外れ

学校でのいじめや仲間外れは、「人は自分を拒む」「集団の中にいると危ない」という見取り図を強めることがあります。家庭が安定していても、思春期に長いいじめを経験した人が、大人になって近づくことを怖がるようになる、という話は臨床でよく聞かれます(考察。愛着スタイルとの因果を示す決定的な研究はまだ少なく、未確定)。人への不信感が強い人は人間不信と愛着も読んでみてください。

親以外の原因(3)思春期の恋愛と、大人になってからの関係

愛着の型は、子ども時代で固まって終わりではありません。とくに恋愛は、親以外で最も強く愛着を動かす関係です。

初めての恋愛で身につくもの

思春期や若いころの恋愛は、親以外の人に愛着を向ける最初の練習になります。ここで大切にされた経験は安定の方向へ、ひどい振られ方、浮気、束縛、急な音信不通などの経験は、不安や回避の方向へ型を動かしうると考えられます(考察)。「親は普通だったのに不安型になった」と感じる人の中には、この時期の経験が大きかった人もいるはずです。

大人の関係 — 型は相手によって動く

チョピックら(2019)の追跡研究では、恋人や配偶者がいることは、大人になってからの愛着不安と回避の低さと結びついていました。また、年齢とともに愛着不安は中年期以降に下がり、回避は生涯を通じてゆるやかに下がる傾向がありました。安定した相手との関係が型を和らげる一方で、傷つけ合う関係が続けば、もともと安定していた人でも不安や回避が強まることがあります。恋愛のパターンは愛着と恋愛のパターン、年齢による違いは愛着と年齢に書いています。

関係ごとに型が違うことも

親には回避的、恋人には不安、友人には安定、というように、相手によって愛着のあらわれ方が違うのはふつうのことです。離婚の研究で影響が「親との関係」に偏っていたように、ある関係での経験は、まずその関係の型に強く残ります。自分を一つの型に決めつけず、関係ごとに見ていくと、原因の見当もつけやすくなります(考察)。

親以外の原因(4)喪失、死別、転居、トラウマ

人生の大きな出来事も、愛着の型を動かします。

20年の追跡でわかった「つらい出来事」の影響

米国の中流家庭の子どもを1歳で観察し、そのうち50人に20年後の面接を行った研究があります(Waters ほか, 2000)。全体では72%が、1歳と同じ「安定か不安定か」の分類でした。ところが、親を失うこと、親の離婚、親や本人の命にかかわる病気、親の精神疾患、家族からの身体的・性的な虐待という5つのつらい出来事のどれかがあった人では44%(18人中8人)が分類を変えていたのに対し、なかった人では22%(32人中7人)でした。つらい出来事があると、型は約2倍変わりやすかったことになります。

グループ1歳から20年後に分類が変わった割合読み取れること
全体(50人)28%(同じだったのは72%)型はかなり続くが、4人に1人以上は変わる
つらい出来事があった人(18人)44%出来事が型を動かす
なかった人(32人)22%大きな出来事がなくても変わる人はいる

死別と、消化しきれない喪失

大切な人を亡くす経験は、年齢を問わず愛着を揺さぶります。とくに子ども時代に親やきょうだいを亡くし、その悲しみを誰とも分かち合えなかった場合、「大切な人はいなくなる」という見取り図が残りやすいと考えられています(考察)。愛着研究では、喪失やトラウマを消化しきれていない状態が、次の世代の子どもの無秩序型と結びつくことも研究されてきました(Verhage ほか, 2016 では r = .21)。

転居、転校、別れの多い子ども時代

親の仕事で何度も転校した、親が入れ替わる環境で育った、というように、親しい人との別れが何度も続く経験も、関係を深めることへの慎重さにつながりえます。仲よくなってもどうせ離れる、と学ぶと、はじめから深入りしない工夫が身につくためです(考察・未確定)。

トラウマと愛着の重なり

事故、災害、暴力、性被害などのトラウマ体験は、愛着の型と重なりながら、人を信じることや近づくことを難しくすることがあります。トラウマの症状が強い場合は、愛着の問題として一人で取り組むより、トラウマに詳しい専門家の支援が役に立ちます。詳しくは愛着とトラウマやトラウマチェックへ。

原因の地図 — 一枚で見る

ここまでの話を、一枚の地図にまとめます。愛着の型は、乳幼児期の養育を土台にしながら、その後のたくさんの関係と出来事が上に積み重なってできています。

いまの愛着の型 喪失・死別・転居・トラウマ 恋愛・大人になってからの関係 学校・友だち・いじめ きょうだい・祖父母・離婚 養育者の応じ方(土台) 気質・遺伝(乳児期は小さい) 一生 思春期〜 学童期〜 幼児期〜 乳幼児期
愛着の型を形づくる条件の地図(当サイト作成)。土台は養育者の応じ方だが、その上に家族のほかの関係、学校と友だち、恋愛、人生の出来事が積み重なる。右端はその条件が主に働き始める時期。
条件主な時期研究での確かさ根拠
養育者の敏感さ乳幼児期高い(ただし結びつきは中程度)De Wolff & van IJzendoorn(1997)
親自身の愛着の状態乳幼児期高い(伝達のすきまあり)Verhage ほか(2016)
遺伝・気質乳児期は小さい/思春期はある程度研究で結果が分かれるBokhorst ほか(2003)、Fearon ほか(2014)、Fraley ほか(2013)
親の離婚とくに幼少期中くらい(影響は親との関係に偏る)Fraley & Heffernan(2013)
親友との関係の質学童期〜思春期中くらいFraley ほか(2013)
つらい出来事(死別・虐待・病気など)一生中くらい(小さな研究)Waters ほか(2000)
恋愛・パートナーの有無思春期〜中くらいChopik ほか(2019)
いじめ・転居学童期〜低い(臨床の知見が中心)考察

「土台」は変えられないが、上の層は増やせる

乳幼児期の土台は、もう変えることができません。けれど、その上には、これからも新しい層が積み重なっていきます。安定した友人、信頼できるパートナー、カウンセリングでの対話。上の層を増やしていくことが、型を変えていくということです(考察)。

原因が一つに見つからなくてもいい

この地図を見て、「どれも少しずつ当てはまる」「どれもはっきりしない」と感じる人もいるでしょう。それで大丈夫です。原因をはっきりさせることは、変えていくための条件ではありません。

型は大人になっても変わるのか

原因を知りたい人の多くは、その先で「では、もう変わらないのか」を気にしています。研究の答えは、型は中程度に安定しているが、変わるです。

「続きやすい」と「変わらない」は違う

フレイリー(Fraley, 2002)は、1歳で測った愛着の安定がその後どのくらい続くかを、1歳から19歳までの追跡研究をまとめて調べました。データに最もよく合ったのは、幼いころの型がある程度の力で残り続けるモデルで、その強さは .39 でした。幼いころの経験は消えずに影響を残しますが、その強さは「決まってしまう」ほどではありません。ウォーターズら(2000)の研究でも、7割が同じ分類だった一方、3割近くは変わっていました。

変わる方向を決めるもの

方向きっかけになりやすいもの根拠
不安定の方向へ親を失う、親の離婚、重い病気、家族からの虐待などのつらい出来事Waters ほか(2000)
不安定の方向へ(親との関係)幼いころの親の離婚Fraley & Heffernan(2013)
安定の方向へ恋人や配偶者がいる関係Chopik ほか(2019)
安定の方向へ年齢を重ねること(不安は中年期以降、回避は生涯を通じて下がる傾向)Chopik ほか(2019)
安定の方向へつらい過去を一貫して語れるまで整理すること(獲得された安定型)Pearson ほか(1994)

「獲得された安定型」という人たち

子ども時代につらい経験をしたと語りながら、その経験を落ち着いて一貫した形で語れる大人がいます。こうした人は研究の世界で「獲得された安定型」(earned-secure)と名づけられています。幼児の親を調べた1994年の研究(Pearson, Cohn, Cowan & Cowan)では、この獲得組の親の子育ての質は、生まれ育ちから安定していた親と変わりませんでした。原因が子ども時代にあっても、その後の人生で安定を身につけることはできるということです。変え方の全体像は愛着スタイルの変え方にまとめています。

「親のせい」と決めつけないほうがいい理由

ここまで読んで、「結局は親の影響が大きいのでは」と感じた人もいるかもしれません。養育の影響は確かにあります。そのうえで、すべてを親のせいと決めつけることには、あなた自身にとって損な面もある、というのがこの節の話です。

理由1 — 数字の上で、親だけでは説明しきれない

敏感さと愛着の結びつきは r = .24、親から子への受け渡しは r = .31 でした。どちらも意味のある値ですが、説明できない部分のほうがずっと大きいのです。そこには、親以外の関係、出来事、本人の性質、偶然が入っています。

理由2 — 「親が変わらないと自分も変われない」になってしまう

原因をすべて親に置くと、変わるための鍵も親が握っているように感じられます。親が謝らない、親が変わらない限り、自分は楽になれない。けれど実際には、獲得された安定型の人たちの多くは、親が変わったからではなく、自分がほかの関係の中で新しい経験を積んだから変わっています(考察)。

理由3 — 親の苦しさを見落とすと、自分の連鎖も見えにくい

親自身もまた、その親や時代の中で型を身につけた人です。親の事情を知ることは親を許すことではありませんが、自分が同じ場面で同じ反応をしそうになったとき、それに気づく助けになります。親子の相性の見方は親子の愛着の相性でも扱っています。

それでも、親の責任が消えるわけではない

ただし、虐待やネグレクト、暴言のように、はっきりと子どもを傷つける行為があった場合、それは「いろいろな原因の一つ」とぼかしてよいものではありません。親の行為の責任と、あなたがこれからどう生きるかは、別々に考えてよいのです。自分の親が「毒親」にあたるかを考えたい人は毒親とはや毒親診断を参考にしてください。

自分の過去を振り返るときの注意

自分の型の原因を探るとき、多くの人は子ども時代の記憶をたどります。そのとき気をつけたいことがあります。

記憶は、いまの気持ちで色がつく

記憶は録画ではなく、思い出すたびに組み立て直されるものです。いま恋愛で苦しんでいるときには、つらかった場面ばかりが思い出されやすく、落ち着いているときには、よかった場面も浮かびやすくなります。フレイリーとヘファナン(2013)が、親の離婚という比較的はっきりした出来事をあえて選んだのも、子ども時代の親との関係を振り返って答えてもらう方法には、振り返りの偏りが入りやすいからでした。

「覚えていない」ことにも意味がある

回避型の傾向がある人は、子ども時代のことを聞かれても「普通だった」「あまり覚えていない」と答えやすいと言われます(成人愛着面接の研究で、拒否型の語り方の特徴として知られています)。覚えていないことは、何もなかった証拠でも、ひどいことがあった証拠でもありません。思い出せないことを無理に掘り起こさなくていい、ということでもあります(考察)。

振り返りのチェック表

確かめること問いの例なぜ大切か
事実と解釈を分ける「何があったか」と「それをどう感じたか」を別々に書けるか解釈は、いまの気持ちで変わりやすい
よかった記憶も探す安心できた場面、助けてもらった場面はあったかつらい記憶だけで全体を塗りつぶさないため
親以外の人も思い出す祖父母、先生、友だち、恋人との関係はどうだったか原因は親だけではないため
時期を分ける乳幼児期、小学生、思春期、大人で、何が違ったか型が動いた時期がわかると手がかりになる
体の反応を見る思い出すと動悸、震え、強い吐き気が出るか出るときは一人で続けず、専門家と一緒に

ひとりで深く掘りすぎない

つらい記憶を一人で何度も思い返すと、気持ちが整理されるどころか、かえって苦しさが増すことがあります。書き出してみて苦しくなったら、いったん手を止め、信頼できる人やカウンセラーと一緒に扱うほうが安全です。当サイトのアダルトチルドレン診断は、振り返りの入り口として使えます。

親を責めることと、理解することの違い

原因を知ると、親への怒りがわいてくることがあります。怒りを感じるのは自然なことで、無理に抑える必要はありません。そのうえで、「責める」と「理解する」の違いを知っておくと、自分の気持ちを整理しやすくなります。

責める理解する
問いの向き「誰のせいか」「何が起きていたのか」
親の見え方悪い人、ひどい人限界と事情を抱えた一人の人
自分の見え方被害を受けた人(だけ)被害を受け、そこで工夫して生き延びた人
次の一歩相手が変わるのを待つ自分がどうしたいかを考える
許すこととの関係許さないことが目的になりやすい許すかどうかは別に決めてよい

理解は、許すことを求めない

親が抱えていた事情が見えてきても、それで子ども時代の痛みが帳消しになるわけではありません。わかることと、水に流すこと、元の関係に戻ることは、それぞれ別の選択です。わかることは、あくまで自分の歩みを見通しよくするためのものです。親との距離の取り方は毒親と距離を置く方法、距離を置いたときの罪悪感は毒親への罪悪感で扱っています。

怒りは、通り道として大切

ずっと親をかばってきた人にとって、怒りを感じられるようになることは、それ自体が前進です。怒りを感じ、言葉にし、やがてそれが少しずつ落ち着いていく。その通り道の途中で止まってしまわないことが大切です(考察)。

原因がわかったあとに — 型を変えていく5つのステップ

窓辺で育つ鉢植えの植物。愛着の型は、あとから積み重なる経験で少しずつ育ち直していく
土台は変えられなくても、その上に新しい経験を重ねていくことはできる。

原因を知ることは、ゴールではなく出発点です。ここからは、原因の見当がついたあとに、型を変えていくための具体的な手順です。

01

いまの型を確かめる

まず、いまの自分の型を確かめます。原因をたどる前に「いま、どの関係で、どう揺れているか」を知るほうが先です。愛着MBTI診断や愛着スタイルのセルフチェックが使えます。

02

その型が「何を守るための工夫だったか」を書く

「サインを大きくしないと届かなかった」「気持ちを出すと拒まれた」など、型が身についた条件を一行で書きます。原因探しではなく、工夫の意味を見つける作業です。

03

いまの関係で、その工夫が必要かを問う

子ども時代には必要だった工夫が、いまの相手の前でも必要かを考えます。相手が約束を守る人なら、見張り続けなくてもいいかもしれません。

04

安全な相手と、小さな新しい経験を積む

不安型なら「確かめずに待ってみる」、回避型なら「困っていることを一つだけ話す」、恐れ回避型なら「近づいたまま一晩過ごす」。信頼できる相手との間で、小さく、何度も試します。

05

ひとりで難しいときは、専門家と一緒に

過去の記憶が強くよみがえる、同じ失敗をくり返す、というときは、カウンセリングで過去を言葉にすることが助けになります。愛着障害の治し方や愛着の回復にも方法をまとめています。

「治らない」と感じるときに

何年も取り組んでいるのに変わらないと感じることもあります。変化は、多くの場合、ゆっくりで、行きつ戻りつします。愛着障害が治らないと感じるときも参考にしてください。

型別・いま取り組めること

原因の見当がついたら、型ごとに次のような取り組みができます。すべてを一度にする必要はありません。

型身についた工夫(推定)いま試せることくわしい記事
不安型サインを大きくして確かめる確かめたくなったら10分待つ。不安を相手ではなく紙に書く不安型のインナーチャイルド
回避型気持ちを出さずに一人で処理するその日の気持ちを一語だけ相手に伝える回避型のインナーチャイルド
恐れ回避型近づくことと離れることの間で揺れる「いま怖くなっている」と言葉にしてから距離を取る恐れ回避型と信頼
安定型頼ることも離れることもできる揺れている相手の安全基地になる。自分の限界も伝える安定型とは

不安型の人へ — 自分を責める声をゆるめる

不安型の人は、「こんなに不安になる自分が悪い」と自分を責めがちです。不安は、応答のむらのある環境で身につけた警報装置です。警報が鳴ったら、止めようとするより、「また鳴っているな」と気づくことから始めます。不安型のセルフ・コンパッションが役立ちます。

回避型の人へ — 感じていることに名前をつける

回避型の人は、気持ちを感じないようにする工夫が上手です。まずは、体の感覚(肩が重い、胸がつまる)から気持ちに名前をつける練習をします。回避型の愛着の傷も参考にしてください。

恐れ回避型の人へ — 揺れを責めない

恐れ回避型の人は、近づいたり離れたりする自分を責めがちです。揺れは、近づいても離れても安心できなかった経験の名残です。揺れを消そうとするより、揺れていることを相手に伝えられる関係を作ることが目標になります。

パートナーの型の原因を知りたい人へ

恋人や配偶者の型の原因を知ると、相手への見方がやわらぐことがあります。ただし、原因がわかっても、相手を変えられるのは相手自身だけです。二人の関係の中でできることは愛着タイプ別のけんかやカップルと愛着で扱っています。

自分が親として「子どもに受け渡したくない」とき

原因を調べている人の中には、自分が親になり、「自分と同じ型を子どもに受け渡したくない」と考えている人もいるはずです。

受け渡しは中くらい、すきまは大きい

親から子への受け渡しは r = .31 で、しかも敏感さだけでは説明しきれない「すきま」がありました。あなたの過去が、そのまま子どもに写し取られるわけではありません。そして、獲得された安定型の親は、ずっと安定だった親と同じ質の子育てをしていました。

完璧を目指すより、すれ違ったあとに直す

どんな親でも、子どものサインを見落とすことはあります。大切なのは、見落としに気づいたときに「さっきはごめんね」と関係を直すことです。直すことそのものが、子どもにとって「関係は壊れても戻る」という学びになります(考察)。子育ての側から見た愛着は愛着と子育てのスタイルへ。

相談の目安と相談先

原因を知る作業は、一人でするには重いことがあります。次のようなときは、専門家の力を借りてください。

相談を考えたいサイン

  • 昔の場面が勝手に浮かんできて、寝つけない日や仕事が手につかない日が続く
  • 相手が変わっても、恋愛や友人関係で似た終わり方が続いている
  • 自分の子どもに、自分がされて嫌だったことをしてしまい、止められない
  • 自分を傷つけたい気持ちがある
困りごとつながる先お金
身の危険がある・見張られている#9110(警察の相談窓口)/DV相談ナビかからない
家の子どもが危ないかもしれない189(児童相談所につながる番号)かからない
何から話せばいいかわからない住んでいる地域の精神保健福祉センター多くはかからない
不眠・沈んだ気分・フラッシュバックがある精神科や心療内科健康保険が使える(心理面接は自費が多い)
安い費用で何度か話したい心理学科のある大学の相談室比較的安い
子ども時代と今の人間関係をつなげて整理したい有資格のカウンセラー、当サイトの相談室回ごとに支払い

相談先の選び方

話を聞いてもらう相手は、公認心理師や臨床心理士といった資格を名乗り、その資格を確かめられる人にしぼると安心です。「過去の原因を見つければ一気に楽になる」とうたうところや、最初に多くの回数分を前払いさせるところは避けましょう。愛着の悩みの相談先でも選び方をまとめています。

診断4万8千人の内訳 — 当サイトの実数から

2026年9月27日の時点で、当サイトの愛着MBTI診断の回答は48,423人分あります(集計は愛着×性格の実測データで公開)。いちばん多いのは恐れ回避型の19,711人(40.7%)で、安定型14,537人(30.0%)、不安型7,536人(15.6%)、回避型6,639人(13.7%)と続きます。約7割が安定型以外で、なかでも恐れ回避型が最も多くなっています。

同じ集計のうち、ビッグファイブの神経症傾向(気持ちの揺れやすさ)も答えた6,600人では、その高さと愛着不安が r = 0.57 で連動していました。双生児研究で思春期以降に本人の性質の寄与が見えてくることとも、矛盾しない数字です。ただし、どちらが原因かはこの数字からは言えません(考察)。

集計の限界

  • 回答者は「愛着」「恋愛の悩み」で検索して来た人が中心で、世の中全体の割合を表してはいません
  • 質問に自分で答える短い診断なので、研究用の質問紙や医師の診断と同じ精度はありません
  • この診断では子ども時代の家庭環境をたずねていないため、原因と型の関係を直接示すものではありません
  • 相関は同時に測ったもので、どちらが先かという因果の向きはわかりません

自分の傾向を確かめるには

自分の愛着の型は愛着MBTI診断で、愛着の傷が気になる人は愛着障害チェックで、刺激への敏感さはHSP診断で確かめられます。型ごとの割合の見方は愛着スタイルの割合へ。

よくある質問

Q. 愛着障害の原因は母親ですか?

母親に限らず、幼いころの養育者の応じ方は愛着の土台になります。ただし、66研究をまとめた研究では、養育者の敏感さと愛着の安定の結びつきは r = .24 と中程度で、唯一の条件ではありませんでした。父親や祖父母、友人、人生の出来事なども型に関わります。

Q. 親以外に、愛着の型に影響するものはありますか?

あります。研究では、子ども時代の親友との関係の質、幼いころの親の離婚、親を失うことや家族からの虐待などのつらい出来事、恋人や配偶者との関係が、大人の愛着と結びついていました。いじめや転居も、臨床では型を動かしうるものとして挙げられます。

Q. 愛着スタイルは遺伝しますか?

乳児の双生児研究では遺伝の影響はほとんど見られず、違いは家庭の環境で説明されました。一方、15歳の双生児研究では35〜38%程度が遺伝で説明されました。年齢によって結果が異なり、遺伝で型が決まるとは言えません。

Q. 回避型になりやすい幼少期の家庭環境は?

甘えや弱音に冷たく応じられた、身の回りの世話は十分でも気持ちには触れてもらえなかった(情緒的な不在)、「自分のことは自分で」と強く求められた、といった環境がよく語られます。ただし傾向であり、こうした家庭で育った人がみな回避型になるわけではありません。

Q. 恐れ回避型の原因は虐待ですか?

必ずしもそうではありません。乳児の無秩序型は、親がおびえている、または子をおびえさせるふるまいと結びつくことがわかっていますが、一般の家庭でも約15%に見られ、原因はそれだけではないとされています。大人の恐れ回避型は、思春期以降のいじめや恋愛での傷つきが重なって強まることもあります。

Q. 親は普通だったのに、なぜ不安型なのでしょうか?

親の関わりで説明できるのは一部です。きょうだいとの比較、友人関係、思春期の恋愛での傷つき、生まれつきの敏感さなど、親以外の条件が重なっている可能性があります。また、同じ家庭でも子どもによって経験は違います。原因が一つに見つからなくても、型を変えていくことはできます。

Q. 大人になってから愛着の型は変わりますか?

変わりえます。1歳から20年後を追った研究では72%が同じ分類でしたが、つらい出来事があった人では44%が分類を変えていました。また、恋人や配偶者がいることは愛着不安と回避の低さと結びつき、年齢とともに不安や回避は下がる傾向がありました。

Q. 原因がわかれば、愛着障害は治りますか?

原因を知ることは助けになりますが、それだけで型が変わるわけではありません。大切なのは、いまの関係の中で小さな新しい経験を積むことです。つらい過去を整理して安定を身につけた「獲得された安定型」の人もいます。一人で難しいときは、専門家と一緒に取り組んでください。

出典と確認範囲

  • 愛着理論の枠組み: Bowlby, J. (1969). Attachment and Loss, Vol. 1: Attachment. Basic Books. / Ainsworth, M. D. S., Blehar, M. C., Waters, E., & Wall, S. (1978). Patterns of Attachment. Erlbaum.
  • 敏感さと愛着: De Wolff, M. S., & van IJzendoorn, M. H. (1997). Sensitivity and attachment: A meta-analysis on parental antecedents of infant attachment. Child Development, 68(4), 571–591.
  • 愛着の世代間伝達と伝達のすきま: Verhage, M. L., Schuengel, C., Madigan, S., Fearon, R. M. P., Oosterman, M., Cassibba, R., Bakermans-Kranenburg, M. J., & van IJzendoorn, M. H. (2016). Narrowing the transmission gap. Psychological Bulletin, 142(4), 337–366.
  • 双生児研究: Bokhorst, C. L., Bakermans-Kranenburg, M. J., Fearon, R. M. P., van IJzendoorn, M. H., Fonagy, P., & Schuengel, C. (2003). Child Development, 74(6), 1769–1782. / Fearon, P., Shmueli-Goetz, Y., Viding, E., Fonagy, P., & Plomin, R. (2014). Genetic and environmental influences on adolescent attachment. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 55(9), 1033–1041.
  • 大人の愛着の由来: Fraley, R. C., Roisman, G. I., Booth-LaForce, C., Owen, M. T., & Holland, A. S. (2013). Interpersonal and genetic origins of adult attachment styles. Journal of Personality and Social Psychology, 104(5), 817–838.
  • 型の安定と変化: Fraley, R. C. (2002). Attachment stability from infancy to adulthood. Personality and Social Psychology Review, 6(2), 123–151. / Waters, E., Merrick, S., Treboux, D., Crowell, J., & Albersheim, L. (2000). Attachment security in infancy and early adulthood: A twenty-year longitudinal study. Child Development, 71(3), 684–689. / Chopik, W. J., Edelstein, R. S., & Grimm, K. J. (2019). Longitudinal changes in attachment orientation over a 59-year period. Journal of Personality and Social Psychology, 116(4), 598–611.
  • 親の離婚: Fraley, R. C., & Heffernan, M. E. (2013). Attachment and parental divorce. Personality and Social Psychology Bulletin, 39(9), 1199–1213.
  • 保育と愛着: NICHD Early Child Care Research Network (1997). The effects of infant child care on infant-mother attachment security. Child Development, 68(5), 860–879.
  • 無秩序型: Main, M., & Solomon, J. (1990) / Main, M., & Hesse, E. (1990)(いずれも Greenberg, Cicchetti & Cummings 編 Attachment in the Preschool Years, University of Chicago Press 所収)。 / van IJzendoorn, M. H., Schuengel, C., & Bakermans-Kranenburg, M. J. (1999). Disorganized attachment in early childhood. Development and Psychopathology, 11(2), 225–249.
  • 大人の4分類と獲得された安定型: Bartholomew, K., & Horowitz, L. M. (1991). Journal of Personality and Social Psychology, 61(2), 226–244. / Pearson, J. L., Cohn, D. A., Cowan, P. A., & Cowan, C. P. (1994). Earned- and continuous-security in adult attachment. Development and Psychopathology, 6(2), 359–373.
  • 診断の回答数と相関: 当サイト愛着×性格の実測データ(2026年9月27日集計)。
  • 論文の数字は、2026年9月27日に各論文の要旨・本文で確認した範囲で記載しています。いじめ・転居・回避依存症の家庭環境についての記述は、研究で確かめられた結論ではなく、臨床の知見にもとづく考察です。
  • 本記事は情報提供を目的としたもので、診察やカウンセリングの代わりにはなりません。不調が長引くときは医療機関・公的窓口へ。監修: 臨床心理士。

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📋 この記事について
執筆・編集
愛着MBTI編集部(一般向けの自己理解情報を制作)
監修
臨床心理士 大金令弥。運営・編集責任者本人が監修しています。監修は、タイプの推定や診断の精度を実証するものではなく、医学的な診断・治療ではありません。
最終更新
2026年9月27日
根拠の扱い
本文中に個別の出典リンクがある記述のみ、その資料に基づく説明です。出典が示されていない記述には編集部による整理・解釈が含まれ、研究で確認された事実を示すものではありません。タイプ判定は傾向の整理であり、個人の行動や将来を言い当てるものではありません。
ご注意
本記事は医学的な診断・治療にあたるものではありません。気分の落ち込みや対人関係の困難が続く場合は、医療機関や心理カウンセリングへのご相談をご検討ください。

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